Ring's Fantasia

ほんの少し羽根を休めて、現実(いま)ではない何処かに旅してみたいと想いませんか?



 湖底に射す陽の光 

 第15話 


 忘れない。
 僕の故郷がここにあったことを。
 忘れない。
 それを愛し、守ってくれた人たちがいたことを。
 忘れない、忘れない。
 僕の、大切な――。

 湖面が近付いてくる。陽の光がきらきらとその湖面を照らしているのが、セラティンとラスクの瞳に映った。
「――はぁ……ッ」
 湖面から顔を出し、セラティンは1つ息を吸い込んだ。
 澄んだ大気が、セラティンの胸に拡がった。
(あの時の、感覚だ……)
 赤子の時、初めて吸った大気。きらきらと降り注ぐ陽の光。
 目の前に広がる光景が、その時の記憶と重なり、セラティンの視線は釘付けになった。
「綺麗だ……」
 木々の間から零れ落ちる光が、大地と湖面に美しい模様を描き出す。渡る風が、さわさわと木の葉を揺らしていた。生きている世界がそこにあった。
「やはり、あなたは陽の光が良く似合う」
 セラティンを抱き締め、ラスクはそう声にして微笑んだ。そんなラスクの瞳の中に自分の姿を見つけて、セラティンもまた微笑んだ。
「ラスク。あなたが、欲しい……」
 その言葉は、セラティンの口から、自然と零れた。
「今すぐ、ここで、僕を……」
 そう告げて、セラティンはラスクの唇に口付けた。

 ぱしゃ、ぱしゃ、と湖面に水音が響いた。
 湖の辺り、半身を水に預けるような格好で、セラティンとラスクは互いに抱き合った。
「私も、あなたが欲しい……」
 セラティンを見つめて、ラスクがそう言葉にする。
「うん、僕も……」
 そう答えて、セラティンは極上の笑顔を浮かべた。そのセラティンの脚をラスクの手がやんわりと開いていく。脚を開かれるその感覚に、ほんの一瞬だけ何かを思い出し、セラティンはびくり、と身体を震わせた。
「――ん、」
 知らず強張ってしまう身体から、上手く力を抜くことが出来ず、セラティンは両手でラスクを抱き寄せた。
「怖い、ですか?」
 セラティンの様子に気付き、ラスクが声を掛ける。その問いに、セラティンは慌てて首を振った。
「嫌……、止めないで……、」
 かろうじてそう声にしたものの、一度意識してしまった身体は、セラティンの言うことを聞いてはくれなかった。かたかたかた、と震えが止まらない。
「我が君、」
「ラスク、ラスク……、」
 縋りつくように名前を呼んで、セラティンは自分を抱き締める存在を、必死に見つめた。
「名前を……、呼んで……」
 ラスクを瞳に捉え、セラティンはそう懇願した。
「――セラ、」
 1つ息を吸い込んで、ラスクは心を込めて、その名を呼んだ。温かいその響きが、身体中に広がっていくのを、セラティンは感じた。
「好き、……もっと、」
「……セラ、セラ、……セラ、」
 求められるままに何度でも、ラスクはその名前を呼んだ。そうして、セラティンがその声とたゆたう水にその身を任せるようになった頃を見計らって、ラスクはそっとセラティンの中に指を侵入させた。
「――はぁ……ッ、あ、」
 セラティンの声が上がる。ぴくり、と跳ねるセラティンの脚の動きに合わせて、湖面が波を立てた。
「あ、あ……ッ」
 若草の上で、セラティンの黒髪が揺れた。大きく首を振って、セラティンが絶頂の時が近いことを知らせる。
「あ、もう、……ラスク――ッ」
 涙を浮かべた翡翠色の瞳が、ラスクを求めた。
「セラ、」
 もう一度その名を呼んで、ラスクはゆっくりとセラティンの中に侵入した。
「ああ――……ッ」
 セラティンが背を反らせる。浮いたその背に腕を回し、ラスクはセラティンの身体を強く抱き締めた。
「あ、あ、あ、……ッ」
 水音が次第に激しくなる。ラスクの背を抱き締めるセラティンの指が小さく痙攣した。それに合わせてセラティンの最奥へと突き上げて、ラスクも小さく肩を震わせた。
「はぁ、……ッ」
 ひゅっと1つ大気を吸い込んで、そうしてセラティンは、その強張りを解いた。

 開いたセラティンの瞳に、降り注ぐ陽の光が映った。
 その光を浴びて、湖面がきらきらと輝いていた。

                             …Fin.




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最後までお付き合い下さりありがとうございました!!
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 後記 


 いかがでしたか…? どきどきどき…(^^;
 楽しんでいただければ幸いです(^^)

 ご存知の方もいらっしゃるかも知れませんが、今回のお話は、ある企画に参加させていただいて書いたものですvv
 『同期生企画』。オリジナルBL小説を書いてらっしゃる架月真名さん、秋月真珠さん、月代おるはさんの発案で、同志の輪を広げようと、同じキーワードの中からお話を書くステキ企画でした♪
 キーワードは、『主従関係』、『3P』、『水の中のえっち』♪
 今回のお話は、このキーワードによって導かれたお話ですvv ステキなキーワードのお陰で、そうして皆さんと一緒に書く、というステキ企画のお陰で、高瀬もいつもより一層張り切ってお話に取り組めましたvv

 まずは、真名さん、真珠さん、おるはさんvv
 ありがとうございました!!!

 そうして、一緒に参加して下さった、ミツル。さん、小夜子姉さま、羅夢さん、Leoれおさん、nei801さん、庄次郎さんvv
 ステキなお話を読ませて頂いて、ありがとうございました!!

 そしてそして、読んで下さった皆さん!
 本当に本当にありがとうございます♪

 ご意見ご感想、拍手はいつでも大歓迎です〜(><)
 涙が出るくらい励みになりますvv

 さて最後に、恒例(?)の裏話を少々(^^)
 今回のお話、上の3つのキーワードの中から、『水の中』に強く心惹かれた高瀬。水の中でえっちできるんだから、主人公は人間じゃないだろうという、高瀬の非常識な妄想から生まれました(^^;
 でも当初は全く違うプロットでした。セラとラスクは幼馴染み。しかも、セラのが年上。ラスクはやんちゃ少年(笑)。ふとしたきっかけで、ラスクはセラを強姦してしまう(←高瀬相変わらず強姦作家のような気が…!)。行為の後、セラはにっこり微笑んで、「お別れだ。僕は人間じゃないみたいだから」と去っていく。ラスクはセラを探す旅に……。とか何とか。

 ところが、欲張りな高瀬、『主従関係』も入れてみたくなって(笑)。
 その頃、セラは己の主に乱暴されていたりして。とか何とか考えていましたが。やっぱり主人公2人が主従関係になくてはね! と却下。そこで新たに生まれたのが、今のセラとラスクですvv
 がしかし、この時点ではもう少しシンプルで、セラはこんなに不幸ではなかった…!

 残る『3P』がどうしても気になる…。何とかして組み入れられないものだろうか。(←己の欲望にはどこまでも忠実(笑)な高瀬…)
 遂に登場したのが、ソウガ兄さんであります。
 この時点で、セラはとんでもない設定を背負わされました(^^;;
 残念ながら、『3P』は入らなかったのですが(でも別のところで3Pされてしまったセラ(苦笑)。ちなみにソウガxネストxセラがあったかどうかは秘密(笑))、こうして、今回のお話は出来上がりました(^^)

 苦戦しましたが、出来上がると、とてもお気に入りのお話になってくれましたvv
 ステキなキーワードのお陰ですね(^^)

 本当にありがとうございました♪
 もし機会があれば、ラスクとセラのその後、とか書いてみたいですねvv
 これからも精進いたします(^^)
 ともあれ、お付き合い下さり、本当にありがとうございました!
     高瀬 鈴 拝