スピードと集中力 そして繰り返し
学芸塾の生徒、保護者さんには冊子「能率のよい勉強の仕方」をお渡ししていると思います。
「能率のよい勉強の仕方」では脳の仕組みから始まって、気持ちの持ち方、いつ何回復習すればよいか、などを説明しました。今一度、お子様に読ませてください。
今回は、もう少し具体的に暗記の仕方について説明しようと思います。
考える、覚えるという作業を能率的に行うためには、、
ー 能率的に行うとは、短い時間で正確にできるようにするということです。
そのためには集中の深さが必要です。深い集中状態では脳は「大切なこと」と判断し、記憶に残そうとします。
集中力とスピードには深い関連があります。
ダラダラ、ゆっくりやっていると集中は高まりません。
逆にいうと、集中力を高めるためにはスピードを上げればよいのです。
例えば、読むスピードを上げる、書くスピードを上げる。
国語の弱い生徒は音読させればすぐわかります。たどたどしい、読み間違いが多い、へんなところで切る、漢字が読めない、遅い。
国語の力をつけるためには問題集を解くということも大切ですが、読書も大切です。よく言われることですね。いろんな本を読んでいる子は言葉をよく知っています。
ですがその前に、国語の力が弱い生徒、低学年の生徒の場合は声を出して同じ文章を何度も読む、という練習が効果があります。
学芸塾独自の勉強方法のひとつですが、「速音読」を紹介します。
3つ注意点があります。
1. 人に読んで聞かせるようにゆっくり感情をこめて読んではいけません。早口言葉のようにできるだけ速く読みます。
2. 小学生の場合は親が聞いてあげてください。
国語力のない子は「・・を」を「・・に」と言い間違ったり、書いていない言葉を付け加えたりします。
3. 読めないからといって子供を叱ってはいけません。ゲーム感覚でおこないます。
ー 速音読(そくおんどく)のやり方 ー
では、次のようにやってみてください。
まず、読む文章ですが、教科書は学校で繰り返し読んでいるので、教科書以外のものでまだ読みなじんでいない文章、塾の国語のテキストでも、社会科でも理科でもかまいません。社会の弱い生徒は社会のテキストを読ませると同時に暗記にもなるのでいいかもしれませんね。
1P程度の文章を
「何分で読めるか時間を計るからね。よーい、スタート」で始めます。
「ハイ!2分45秒!」
(*1回目に読ませたときに、読めない漢字があるときはフリガナをふらせてからやり直してください。)
「もう1回チャレンジしてみよう。今度は2分30秒きれるかな?無理かな?
ハイ!スタート!」
「2分25秒!やったあ。すごい!」 ←ほめてあげる
*これでドーパミンがドバーと出ます。子供はもう1回!と必ず言いいます。
「じゃあ、3回目のチャレンジ。よーい、スタート」
「2分23秒!新記録達成!!」
*子供はニコニコしているはずです。
もう一つ注意があります。
前回の時間より遅くなってしまう場合もあります。このときはもう一度チャレンジさせて、必ず1秒でも記録更新してからこの訓練を終了してください。(嘘ついて記録更新したことにしてもかまいません。)
子供に達成感と楽しいという感覚をあじあわせることで脳は記憶に残そうとします。そしてまた次もやりたい、という気持ちを持たせます。
この読むスピードが
テストのときに読むスピードになります。
入学試験の国語の問題はかなりの長文です。5分で半分しか読めない子と5分で3回読める子、点数の差は歴然です。
テストのときだけ速く読んでみても頭がついてこないので文の意味が理解できません。どの教科の勉強をするときも常日頃から速く読むことを習慣づけなければなりません。
時間を計って速く読む訓練は1回やったからどうこうなるものではありません。数日おき、少なくとも1週間に1回ぐらいのペースで長く続けないと効果はありません。
中学生なら自分で目標を設定し携帯電話のツールのストップウォッチで時間を計って英語の教科書を速音読するといいです。
知らないうちに教科書の文が暗記できていることに気づいて驚くでしょう。
ただし、日本語訳をやった後にしてください。意味が分からないのに読んだり覚えたりしても能率が悪いですから。
速音読の訓練で得られること
1. 集中を持続する訓練となる。
2. 集中した状態で繰り返し読むので、国語力が上昇するだけでなく、暗記の効果も高い。
3. 速く読むことが習慣になると、ふだん勉強するときのスピードが上がるし集中力も上がる。結果、能率が上がり成績アップにつながる。
この速音読の訓練を是非、やってみてください。
ー 目標設定とモチベーションの維持(いじ) ー
モチベーション(motivation)とは
ときどき耳にする言葉だと思います。モチベーションとは、「動機、動機づけ、やる気」という意味です。
バスケの秋季大会で優勝したい!土佐中に受かりたい!だから頑張るぞ!と思うことがモチベーションです。
そのために頑張って練習したり勉強したりするのですが、長続きできずにやる気がなえてしまうことがよくあります。そんなときモチベーションが下がった、モチベーションが維持できない、などと言います。
モチベーションを維持、持続するためにはどうしたらいいか。
その一つに、目標設定をするという方法があります。
目標を設定し、その目標が達成できたときに、人は「満足感」「達成感」を感じます。
そのことが次のやる気につながることもありますが、逆にモチベーションの維持どころかそこで終了してしまうこともあります。
○○中学に合格したけど、入ってから全く勉強しなくなって成績はさっぱりだとか、念願の○○大学に合格したけれど目的を失って何をするにもやる気がでなくなってしまったとか。旦那が結婚する前はちやほやニコニコ大切にしてくれたのに結婚したとたんにほったらかしになった(それはちがうか(笑))。
よく聞く話です。
モチベーション(やる気)を維持し、終了させないために、目標は長期の目標と短期の目標を設定します。
長期の目標とは、例えば、将来医者になる、とか○○大学に入る、俺は海賊王になる、とか。
しかし、それだけではあまりに遠すぎてモチベーションが持続できません。
東大に絶対入る!なんて言ってるのに全然勉強しない。なんてことがおこります。これでは目標ではなくて実現不可能な夢になってしまいます。
そこでもう少し短めの中期の目標設定をします。
医者になるための通過点として○○高校、あるいは○○中学に入る、英検3級をとる、とか。
さらにもっと短期の目標設定が必要です。
短期の目標設定は自分にとって実現可能な目先のことに設定し、目標達成したら次の段階へと次々と目標のハードルを上げていくのです。
社会のテストが今50点だとすると、いきなり100点をとる!というのは遠すぎてモチベーションが維持できません。
次のテストは55点、達成できたら次は60点とか。
得意科目なら80点以上を連続3回とる、とか。いろいろあると思います。
例えば、漢字の小テストで2回連続で100点をとる。という目標設定をしたとします。
目標達成できたら、3回、その次は何回連続で100点とれるか新記録に挑戦。とするわけです。
3回連続100点とったとします。連続記録挑戦に失敗すると1回からやり直しになってしまうので、今までの連続記録を失いたくないという心理が働きます。ですからよりいっそうがんばるようになります。
(*100点という設定は例であって、現在の力にあわせて自分で設定してくださいね。90点でも80点でもいいです。)
このように目先の目標をクリアすることで「よっしゃ!」「やったあ!」という達成感、満足感をいだかせ、次の目標に向けて挑戦していくことでモチベーション、やる気を維持することができます。
モチベーションを維持するために、やる気を出させるために他にも必要な要因があります。
人はだれでも他人(友達、上司、先生、仲間)から認められたい、ほめてもらいたいと思うものです。大人でも子供でも同じです。
つらい仕事でも上司から「がんばってるねえ」とか「よくやった」とか一言かけてもらっただけで疲れやプレッシャーから解放されてやる気が出るものです。
子供も友達や先生や親からほめられる、努力を認められるとうれしい気持ちになりやる気が出ます。
短期の目標達成はほめる良いきっかけになります。
達成するたびに親はお子さんを一言ほめてあげてください。
もうひとつ、
脳は楽しいこと、うれしいことを生命の維持に必要なことと判断し、記憶に残そうとし、ドーパミンを出してまた次にやりたいという気持ちを持たせると「能率のよい勉強の仕方」に書きましたね。
勉強することはたいていの人にとっておもしろいことではありません。
勉強するという過程の中でおもしろいと感じることを何度も体験することでやる気が出てきて、勉強が嫌だという感覚が薄れていきます。
勉強がおもしろいと感じるときは、難しい問題ができたとき、いい点がとれたときがあるでしょう。これ以外に、短期目標を達成することはおもしろいと感じる機会を増やしてくれるのです。
短期の小さな目標に向けてがんばるときに過度のプレッシャーを与えると逆効果になる場合もあります。
目標を達成することをゲーム感覚(遊び感覚という意味ではありません)で楽しむという気持ちが大切です。
ゲームでは場面とか段階を次々とクリアしながらゴールに進んでいきますね。ゲームオーバーしたらまたもう一度チャレンジするだけです。
勉強もそんなゲーム感覚でチャレンジを楽しみましょう。
そうするうちに勉強がわかるようになるし、成績もあがり勉強がおもしろいと感じることが多くなってきます。
こうなると正のスパイラル、良い方向へどんどん加速していきます。
次に暗記ものの勉強の仕方を塾のプリントを例に説明します。
学芸塾の英語のテキストには各章の各単元に単語のページがあります。
実際のプリント画像をごらんください。
→クリック 「単語トレーニングプリント」
このように覚えてはテストをするという「インプットとアウトプット」をして100点で終わるまでやりとげます。
必ず100点で終わることで小さな達成感と満足感を味わうことができます。
1回で100点とれたなら、なおさら「よっしゃ!」という気持ちになるでしょう。
これで終了ではありません。
人間の脳は1回やったぐらいでは記憶を維持できません。
明日塾にきたら、前の日にやった単語トレーニングプリントをもう一度取り出して自分でテストします。
1日たてばいくつか忘れているのが普通です。
間違った単語を覚えなおして100点で終わるまでやりとげます。ただし、昨日覚えたばかりの単語なので、この作業は数分で終了するはずです。
毎日やっていれば勉強時間は少なくてすみます。つまり短い時間で楽して成績があがるというわけです。
次の日はまた同じことをやります。最低3回はやらないと覚えきることができないのが普通の人の頭です。
学芸塾の中学生はこのように塾に来たら毎日最初にこの単語の復習をすることが約束事になっています。
確認テストはバーコードをピッと読み取るだけで簡単に取り出せます。これは生徒自身でやります。
先生にテストされるとか、やらされるという受け身の行動ではなくて、自分でやるという能動的な行動、気持ちの持ち方がやる気を出させ、積極的な攻めの勉強につながるのです。
そしてこういう積極的な勉強への姿勢は高校生になって良い成績をとっていくためには必ず必要なことなのです。
中学受験、高校受験は通過点でしかありません。
学芸塾の生徒は目先の勉強を習うために塾に通っていると思ってはいけません。
希望する大学に合格するために今、種まきをしているのです。
正しい勉強の仕方を習得するために塾に通っているのだと強く意識してください。
正しい勉強方法が実行できるようになれば結果は必ずついてきます。
次に社会のプリントで説明します。
学芸塾の中学生の理科と社会のテキストはバーコードからすぐに穴抜き問題を3種類取り出すことができます。この3枚は穴の箇所が違うだけでもとの文は全く同じです。このプリントでは記憶が完全でなくてもかまいません。説明文を何度も読み、全体の流れをつかむことが大切です。
→クリック 穴抜きプリント
小学生の授業では同様なことを黒板に書いて生徒みんなに声を出させて読ませ、最終的に穴だらけの文を暗唱できるように練習しています。地図でも歴史でもすぐに覚えてしまいます。家で復習するときも同じように声をだしてやればいいのです。
穴抜きプリントが終わったら次は一問一答プリントで記憶を完全にしていきます。説明ページの要点が一問一答形式で順番が並び変わって出題されます。英単語トレーニングと同様に覚えてテストをして間違ったところだけまたテストをして100点で終了するまで頑張ります。
→クリック 一問一答問題
覚えることを覚えてから普通の問題をやり、定期試験前には試験範囲の一問一答問題をもう一度すべて取り出して復習します。社会科はこれだけで100点に近い点をだれでも取ることができます。
次は数学について
数学・算数は考える科目だと思っている方が大半だと思います。
それはまちがいではありませんが、正しくもありません。
数学も一定レベルまでは暗記科目です。
公式を覚える、計算の仕方のルールを覚える。これだけではありません。解き方を暗記する科目です。
たくさんの解き方を覚えた後にはじめて推理力がつき、難問も解けるようになるのです。
応用問題、難問を考えているときに、学習した解き方のどれに類似しているのか、どれとどれを組み合わせるとパターンにあてはまるのか、そんなことを脳は無意識に記憶にある材料の中からフル回転で探しているのです。
記憶の中に材料がないといくら考えても解けるわけがないのです。
中学生の勉強はほとんどが覚えることばかりです。高校の数学の基礎となることばかりなのです。
学芸塾のテキストでは説明ページで公式や例題の解説が載っています。この時点でわからないことがあれば先生に教えてもらいます。
わかったからといって次に進んだら数学はできるようになりません。
理解できたらバーコードから類題パターンのプリントを出してやります。このプリントは問題が1題あるだけです。
先生に教えてもらってわかったと思ったことがインプットです。数字が変わった類題を解いてみるのがアウトプットです。
正確にアウトプットできるのか確認しないといけません。
インプットとアウトプットをセットで行うことで理解や記憶は定着します。
この類題パターンはさっき教えてもらったばかりの問題、しかも1題だけなので数学の苦手な生徒もたいていできるのです。
苦手な生徒ほど「おっ できた!」とうれしくなるものです。ここでドーパミンがドバーと出て、もう一問やりたいとやる気が出ます。
なんか楽しいなと感じながら類題をたくさんこなしていくうちに解き方のパターンを知らないうちに覚えていくのです。
こんなふうに手順通りに勉強をすすめていくうちに正しい勉強方法を身に付け、やる気を引き出して積極的な学習姿勢に変えていくのがSelfee式自立学習法なのです。
数学が苦手な生徒は数学が嫌いだからと言う。
なぜ嫌いかというと点が悪いからと言う。
なぜ点が悪かというと、わからないからと言う。
わからない→点が悪い→嫌い→苦手 →嫌い→点が悪い→わからない・・・
と負のスパイラルにおちいってしまいます。
じゃあ、逆に考えればいい。
わからないのをわかるようにしてやればいい→点が上がる→好きになる
→得意になる
数学が苦手な生徒に、ハイこれをやりなさいと問題がたくさん印刷されたプリントをいきなり渡してもわからないところだらけだから苦痛でしかないはずです。
一問ずつ教えてあげて練習してから次に進む。これを続けていけばしだいに苦手意識がなくなり数学ができるようになってきます。そしてたくさん問題が印刷されたプリントをポンと渡されても抵抗なく解くことができるように変わるのです。
数学は暗記科目だから解き方のパターンを暗記しないといけないと書きました。小学生の算数も同じです。
塾のテキストの例題が一番大切です。
と受験クラスの小学生に先生はいつも繰り返し言っていますね。
例題はパターンのある代表的な問題だから例題なのです。
例題が解けないのに練習問題や入試問題は解けません。
例題には解き方も図もくわしく書いてあるので、解き方を忘れても読めばたいてい思い出すことができます。
復習のやり方は、授業で習った例題の下の解説部分をかくしてノートに式や図を書いて解きます。
このとき10分考えて解けてもダメです。速音読で読んで、30秒以内に解き方が頭に浮かばないようでは復習したことになりません。
解説を読んで理解できたら、必ずノートに自分の手で書かないといけません。
もう一度かくして30秒以内に解けなければ、もう一度ノートに式を写します。もちろん式や数字そのものを覚えるのが目的ではありません。
解き方を覚えるのです。解き方を覚える過程で式や答えを覚えてしまうのはかまいません。
いや、むしろ、結果として式・答えを覚えてしまうまで何度も復習しなければなりません。
これを続ければ必ず算数はできるようになります。
ここまでの勉強の仕方のポイントを復習します。
1)スピードが大切
覚えるときは、読むスピードも書くスピードもマックス(最大限)で行う必要があります。書いて覚えるときは書道をやっているのではないですから字は少々汚くてかまいません。速く書くことが重要です。
2)繰り返すこと
覚える作業の最中に繰り返し読んで、書いて、をしていますが確認テストで100点を採ったからといってその記憶をずっとは維持できません。
日をあけて同じ問題を3回はやらなければなりません。
インプットとアウトプットを何回も何回もおこなってはじめて記憶と理解は定着します。
ここで動画をひとつご覧ください。
脳科学者の茂木健一郎先生がある高校で講演されたときの映像ですが、
この中で「強化学習」という言葉を使って説明されています。
→クリック 茂木先生の講演
ここまでは勉強の仕方の外枠のようなことを説明をしてきました。
では、もっと具体的に、どんなふうにやったら速く正確に覚えることができるか。
英単語や社会を覚えなさいと言われてもどうやって覚えたらいいのかわからない生徒がいるかもしれません。
実際に生徒が勉強するときのやり方を説明しますが、長くなるので今回はここまでとします。
続きは「勉強の仕方 その2」として必ず書きますので、少々お待ちください。
See you!