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座り込んだままのセラティンの腕を掴み、男が満足げに笑みを浮かべる。
「それにしても美しい……。一番目を競り落とせた私は幸運だな」
標準よりかなり軽いセラティンの身体を抱き上げ、寝台に横たえながら、男はもう一度感嘆の声を上げた。
「まるで陶磁器のような肌だ……」
もどかしげにセラティンの衣服を剥ぎ取り、その肌に手を滑らせて、男はごくりと息を呑んだ。そうして、肌に顔を埋めると、セラティンのしなやかな両脚を抱え上げた。
「……ひッ」
セラティンの後蕾に香油を垂らすと、前戯もなく、男は自分のものを宛がった。現実に引き戻されたセラティンの喉から、小さな悲鳴が上がった。
「……あ、いや、だッ、」
セラティンの声に怯えが混じる。その声に嗜虐心を煽られ、男はぞくりと身を震わせた。
「ひッ――……、あぅッ!」
セラティンの身体を思うことなく、男が身体を突き進める。背を反らせ、寝布を握り締めて、セラティンは苦痛の声を上げた。大きく見開いた翡翠色の瞳から、透明の雫が溢れてくる。
「すばらしい……ッ」
苦痛に震える美しい肢体、掠れる声、狭い胎内、その全てに満足して、男は喉を鳴らした。そうして、思う存分、セラティンの反応を楽しんだ。
薄暗い部屋の中、セラティンの悲鳴だけが響いた。
(……何人目、だ……?)
揺さぶられる度に悲鳴を上げていた場所も既に感覚すらなく、セラティンはぼんやりと天井を見つめていた。ただ、ふと身体の奥で何かが蠢いているような錯覚に、時折吐き気が込み上げていた。そして、それを抑え込むように、くぐもった声だけを上げていた。
「う、……あ、ッ、」
最初の男は、酷いものだった。セラティンの身体を必要以上に甚振り、その反応に至極満足した。養母が決めたのであろう時間いっぱい、ただただセラティンの中に欲望だけを放った。2人目は少しましだった。セラティンに快楽をもたらそうと、丁寧な愛撫を繰り返した。だが、自分の意思に反して無理矢理引き出される快楽に、セラティンは苦痛以上のものを見出せなかった。
(……3人目、か)
ぼんやりと考えながら、今胎内にいる男が3人目であることを思い出し、セラティンはふ、と自嘲気味な笑みを零した。
(何人目だろうが、何回目だろうが……)
どうでもいいことだ、セラティンはふとそう思った。
養父母に売られ、男に犯された。セラティンにとっては、それだけだった。
(……これから……、)
先のことを考えると、セラティンの身体にぞくりと恐怖が走った。
『今まで小汚い形(なり)して騙してきた分、これから稼いでもらうからね』
去り際に養母が投げつけた台詞が、セラティンの脳裏を過る。
(騙した、つもりなんか、ない……。育ててもらった恩を返したかった……。でも、)
セラティンの胸を、再び吐き気が突き上げてくる。
「――うッ」
男が息を詰める声とともに、胎内にまた生温かいものが放たれるのを感じて、セラティンはその全てを堪えるように唇を噛み締めた。
しばらくして、セラティンはやっと開放された。
1人目と2人目が終わった後には、養母は丁寧に身体を拭いてくれた。それが優しさからの行為ではなかったことを、3人目が終わった後にセラティンは思い知らされた。
(……次の客はいない、ということか)
汚されたまま放置され、セラティンは長い息を吐いた。
身体中が気持ち悪かったが、自分では身を捩ることも出来ず、セラティンは瞳を伏せた。
「……セラ? 生きてるか?」
無造作に扉を開ける音とともに、にやけた声が部屋に飛び込んで来た。1つ息を吐いて、少しだけ首を動かすと、セラティンの瞳にアンリとジャンの姿が映った。
「すげぇな」
「ぐちょぐちょじゃねぇか」
その声には、一片の憐情もなかった。
「な、俺たちもいい?」
案の定、予想通りの言葉を掛けられ、セラティンは苦笑した。
(断ったところで、乱暴にされるだけだ……)
この一晩で学んだことを脳裏に刻み、セラティンは瞳を伏せた。
(誰も、助けちゃくれない……)
耐え難い淋しさが、セラティンの胸を支配した。
こくり、と頷き、薄く開いたセラティンの瞳から、一筋だけ涙が零れた。
小さな古い寝台は、セラティン1人の寝返りでも音を立てていた。その寝台の上に3人、しかも激しい動きを伴えば、当然ぎしぎしと大きな音を立てる。近くで聞こえるその音を、何処か遠くで起きた出来事のように思い込ませながら、セラティンは兄たちに身を任せていた。それでも、時折、揺すぶられている腰が誰のものか、アンリのものを捻じ込まれているのは誰なのか、身体中の感覚がセラティンに教えてくる。その度に、セラティンは小さな声を上げた。
「う、ぐッ」
ジャンのものを口に押し込まれ、セラティンの喉から苦痛の声が上がった。次に何をされるか、セラティンも既に知っていた。誰だったか、何度か強いられたことを、セラティンの身体が覚えていた。
(……嫌いだ)
後蕾に捻じ込まれることよりも、セラティンはその行為が嫌だった。大好きな大気を吸いたいと強くそう願いながら、それが2度と叶わなくなるような、そんな錯覚がセラティンを支配する。
「……セラ、いいぜ、お前……ッ」
極まるジャンの声とともに、セラティンの喉の奥に精が放たれた。
「う、あ、……――ッ」
咽込む暇もなく、後蕾を突き上げられ、セラティンは掠れた声を上げた。
(――死にたい……)
ふとセラティンの中に、そんな誘惑が頭を擡げた。
(でも、最後に、陽の光を見たい――)
その願いに、セラティンは遠ざかる意識をかろうじて繋ぎ止めた。