IZUMINO-izm 22年05月号より
うんち学入門ととりいかずよし先生

かつて、本欄でスカトロジー(糞尿譚)が好きだと書いた(2016年5,6月)。また、講談社ブルーバックスが好きだとも書いた(2020年6,7月)。ならば、ブルーバックスから出たこの本を紹介しないわけにはいかないだろう。増田隆一著「うんち学入門」※1である。

読者として中学生以上を想定する本書は、生まれ落ちたばかりなのに子供たちから「臭い、汚い」といじめられ、いじけている「うんち君」と、通りがかりの旅人で、どこかTVアニメ作品ムーミンの登場人物スナフキンを連想させる風貌(ただし、帽子の山はとぐろを巻いている)の「ミエルダ」の二人が「うんち」について語り合いながら旅をするという体裁で論を進めていく。

このような設定のおかげで、本書の語り口はとても優しい。しかし、その内容は案外しっかりしている。副題に「生き物にとって排泄物とは何か」とある通り、生き物にとっての「うんち」の意味や役割、すなわち、個体にとっての、同種の集団間での、他種の動植物間でのそれを考察し、さらに地球環境における物質循環と「うんち」との関わりを考える……。2016年6月の本欄で私が紹介した「ウンコに学べ!」※2を人と「うんち」との関わりについて考察した文系のうんち学入門とするなら、本書は理系・生物学系のうんち学入門と言ってよいだろう。著者は北海道の動物学者で、ヒグマなどの糞を拾ってはPCRを用いたDNA分析などを行っているそうだ。

さてところで。そもそも私がスカトロジー好きになったのは、小学生の頃にとりいかずよし作の漫画「トイレット博士」(週刊少年ジャンプ1970〜1977年連載)を愛読していたからだ。そのとりいかずよし先生が本年2月9日亡くなった(享年75歳)。謹んでお悔やみ申し上げる。合掌。


※1)増田隆一:「うんち学入門」、講談社ブルーバックス、2021年
※2)有田正光/石村多門:「ウンコに学べ!」、ちくま新書、2001年

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