IZUMINO-izm 24年10月号より
熱い街

先月に引き続き、在日コリアンのシンガー、ホン・ヨンウン(1957-2003)の作品の紹介である。1980年5月の光州事件1)については過去の本欄で度々話題にしてきた2)。その光州事件を歌った歌は、私が知る限り、後に俳優として活躍した白竜3)の「光州シティ」と、ホン・ヨンウンの「熱い街」の2曲。だが、私が好きなのは断然「熱い街」である。

歌詞の一部を下に示すが、この歌には決起した光州市民は登場しない。登場するのは、TVニュースを観て叫ぶ「女」と、あとは人称代名詞のついた3人、大阪に住む「ぼく」、ソウルに住む「君」、光州市民に銃口を向ける戒厳軍兵士の「あんた」である。光州市民が民主化を求めて決起し、鎮圧されて倒れていく中、「ぼく」や「君」は大阪とソウルで変わらない日常を生き、悶々としている。

今でも世界や日本のあちこちで悲しい出来事が起き続け、それに対して何もできない自分に無力感を感じるが、それでも何かを変えようと、自分の「現場」でできること、すべきことを考え、闘う。「熱い街」はそのように私を促し続けているように聞こえるのだ。


ぼくの地から 君の地から 何が変わる
君の想い ぼくの想い 何が叶う

熱い光州の街 君はいつもの職場で
ソウルの街は 大阪の街は 光州だけが光ってた

  TVニュースを観ながら 叫んだ女
仕事に疲れた声で 光州を呼んでた

走る戦車 火を噴く銃 誰を撃つんだ
あんたはどこの街で 誰を殺すんだ


1)1980年5月18日、戒厳令下の韓国光州市で起きた民主化要求の市民蜂起。戒厳軍の鎮圧により、多数の死傷者が発生した。
2)湧水2024年5月2023年2月2023年3月2016年10月など。
3)湧水2023年2月参照。

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