「なぜそうなるのか」が分かるとゴルフが変わる!
ゴルフスイングやクラブ、ボール選びなど、ゴルフに関する「なぜそうなのか」を考察してみました。
◆パターの運動量保存の法則とボール速度
質量 m1 、速度 v1 のクラブと、質量 m2 、速度 v2 のボールが同じ直線上を運動していて衝突し、速度がそれぞれ v1' 、v2' になったとします。
運動量保存の法則は、
m1v1 + m2v2 =
m1v1' + m2v2'で表されるので
クラブ(355gのパター)で止まっているボール(45g)を反撥係数 e=1で打つ場合、
クラブはv1'=(m1-m2)/
(m1+m2)*v1で0.78倍に減速し。
ボールは、v2'=(2m1)/
(m1+m2)*v1で1.78倍に加速します。
ここで300gのクラブを使用するとクラブ速度は0.74にボール速度は1.74になります。
∴ 反発係数が同じものは、クラブが重いほどボール速度が速くなり、
異なるパターで同じように打っても、クラブ重量が異なると距離にずれが生じることになります。
ボール速度を決める要素としてクラブ重量、ヘッド速度、反発係数が関係し、ドライバーで距離を出すにはクラブ重量とヘッド速度の積を大きくすれば良いことになります。
パッティングの動きを単振り子と考えた場合、長さLのシャフトで質量mのクラブを鉛直から角度θまで持ち上げて下ろした時、力学的エネルギー保存法則から最下点でのヘッド速度を求めることが出来ます。
クラブの位置エネルギーの基準を最下点とし、
θまで持ち上げた時の位置エネルギーは、mgL(1-cosθ)
最下点での運動エネルギーは速度をvとすれば、(1/2)mv^2
両者のエネルギーは等しいので、v=√2gL(1-cosθ)
∴ 同じ高さからヘッドを下ろした場合の速度はシャフトが長いほうが速いので、パットでオーバーしやすい人は短く握り、ショートしやすい人はヘッドを重くすると良いかも知れません。但し、振り子スイングでなく手打ちの人は、ヘッドが重いほどエネルギーを必要としショートしやすくなります。
◆ボールが右に行く
- 1は飛球線後方から見ると、ターゲットは真ん中の棒と右の棒の間にある
- 2はアドレスした状態でボールを見ると、ターゲットは真ん中の棒と左の棒の間に見える
- ターゲットにボールを運ぶには、飛球線後方から見たとおり、真ん中と右の棒の間に打ち出せばよい
- ラウンドではボール前方に目印(スパット)を見つけ、その方向に振り抜く
◆ボールの方向性
ゴルフのスイングは、横回転と縦回転がミックスされた斜め回転で、パターはほぼ縦回転、ドライバーのように距離が出るクラブほど横回転の度合いが強くなります。ゆえにスイングのどの位置でボールに当たるかで飛び出し方向が決まります
- インパクト時にスイング軸が移動すると方向がばらつくので、体の正面でインパクトを向かえるリズムとタイミングで打つ
- インパクト時のスイング軸が、
- ボールの左にあればダウンブローになり、接線方向は右向き
- ボールの右にあればアッパーブローとなり、接線方向は左向き
- ボールの正面にあればレベルブローとなり、接線方向はスタンス方向
- インパクト時のフェース面が目標方向からずれると、接線方向に飛び出した後サイドスピンで曲がるため、肘の位置や左手甲の向きに注意する必要があります
- スイングは目標方向に向け縦に振ると方向性が良い(ニュートンのゆりかご)
◆傾斜面でのスイング
- 左足上がりの最下点はスイング軸の左になるので、フェースが閉じたアッパーブローになり、高い球筋のフック回転で目標より左に行きやすい
- 左足下がりの最下点はスイング軸の右になるので、フェースが開いたダウンブローになり、低い球筋のスライス回転で目標より右に行きやすい
- 素振りをし、最下点を確認後スタンスを取るとよい
- 傾斜面でのアドレスは、斜面なりに立つ場合と地軸に対して立つ場合ではボール位置が変わります
◆スイング軌道
- クラブでボールを打つという動作で下図のようなスイング軌道の写真を良く見ます。スイングの支点はそれぞれ肩、ひじ、グリップにあり、 インパクト時のグリップやひじの位置によりフェースの向きが変わります
- 腰が回って肩が左を向いたり、左脇が離れフェースが開くとスライスしやすくなります
- シャフトも遠心力や加速度によりねじれや曲がりが発生し、フェースの向きが変わります(硬いシャフトほど曲がりが少ない)
◆シャフトのしなり
- クラブシャフトは上記スイング軌道を見ればわかるようにトップでシャフトが曲がっており「トップしなり」といわれています
- トップでシャフトが止まるとヘッドは慣性の法則で進もうとしてシャフトが曲がり、ダウンスイングからインパクトで「しなり戻り」が発生し、その戻りは固いシャフトは早く、柔らかいシャフトは遅くなります
- クラブヘッドの重心がシャフト延長線上からずれているため、スイングの遠心力でヘッドが外側に引っ張られトゥダウンしライ角がフラットになります
- カーボンシャフトではシートの重なり部分のスパイン位置を6時方向に合わせるとヘッドのトゥダウンを最小限に抑えることができます
- トゥダウンはシャフトが柔らかいほど、ヘッドスピードが速いほど大きくなり、「振り遅れ」や「ダフリ」の原因になります
- シャフトが硬いほど、右プッシュやスライスが出やすい
- クラブヘッドの重心がシャフトから離れていることからねじれも発生し、トルクが大きいほどねじれやすくミスショット時のフェースの変化が大きくなります
- 最近はカーボンの重いものやスチールの軽いものもあるので、振った感じの良いものを選びましょう。でも、良い悪いは別にしてタイミングが合えばカーボンは良く飛びます
- クラブの硬さやトルクは、ヘッドスピードやどんな球筋を打ちたいかで決まり、リズムとタイミングが重要といわれる所以です
◆スイングのバラツキの許容範囲
アベレージゴルファーは、ナイスショットをしてもリズムやタイミングの乱れか、狙ったところの周りに散らばり、
レイアップするにしてもどこに打てば次打でグリーンが狙えるのか不安です。そこで自分のショットのバラツキを知り、残り距離別のグリーン攻略を考察してみます。
ナイスショットのバラツキが腕(50cm)を伸ばした状態で手の平(10cm)以内で左右(約10度)に散らばるとき、
- 200Yでは40Y
- 150Yでは30Y
- 100Yでは20Y
- 50Yでは10Y
に散らばります。グリーンが20Yから30Yとすれば150Y以上ではナイスショットでもグリーンオンの確率は低いので、
100Y前後のセンター狙いかレイアップして50Y以内のピン狙いの確率が高いことがわかります。
70Yや80Yからはグリーンに乗っても2パットの可能性が高くなります。
◆方向性を出すためのポイント
- 体重移動する2軸より1軸スイングがインパクト時のずれが少ない
- 横振りより縦振りスイングが左右に行きにくい
- 脇を締め腕の三角形を崩さないようにするとフェースが開きにくくサイドスピンが減る
- 傾斜面はインパクトポイントがフラットなところと異なる
- 腕とクラブは一本の棒のように動いているのではなく、肩、グリップを支点に運動している
- インパクトは、グリップが体の正面でヘッドが降りてくるのを待つ感じのタイミング
- クラブのシャフトは硬いほどフェースの挙動が少なくインパクト時もぶれにくい
- 当たれば飛ぶクラブより、狙ったところに打てるクラブがその人にあったクラブ
- クラブ重量は重いほど手打ちができなくなる
◆パットにおける軌道
※フェース方向とストローク軌道
フェースを目標にスクエアにセットした場合で、インサイドアウトやアウトサイドインに打った場合のボール軌道は、入射角の3分の1の影響を受けるとの実験結果があります。
仮にカップまでの距離を1mとすると、カップの半径(5.40cm)からボールの半径(2.134cm)を差し引いた距離(3.266cm)までが許容範囲となり、
この角度をAとすると、tanA=(5.40cm-2.134cm)/100cm=0.0326となりA=1.87度、故にA×3=5.61度までのストローク軌道のブレ幅であればカップインすることになります。
この実験からアウトサイドイン軌道はややオープンフェースにインサイドアウト軌道はややクローズフェースがカップに入りやすいことになり、
フェース方向はストローク方向の3分の1の影響がある。
※「パット博士が愛した数式」(週間ゴルフダイジェスト2015NO.24参照)
※ボールのディンプルの影響
正確なパットが再現できるパッティングロボットでもボールのディンプルの角が当たれば微妙に方向が変わるそうです。ロングパットでは表面が潰れて接触箇所が面になるため影響は少ないですが、
ショートパットになるほど接触箇所が点になるので方向性に影響が出やすくなります。
ディンプルの角に当たり1.5度打ち出しが乱れると1m先では2.5cm、2m先では5cm(カップ半分)ずれることになり、
パット面をソフトなインサートに変え角度が0.5度に軽減されると2m先のずれも1.5cmに軽減されます。
それではどうすればディンプルの影響を抑えられるかですが、ひとつはボールに順回転をかけ直進性を良くするアッパー軌道な打ち方、
またはパターフェースの素材が柔らかい(ルール上ショアA硬度は85以上)ものや順回転がかかりやすいフェース溝のものを使用すると良いでしょう。
※「2メートルは理論で入れる!」(月間ゴルフダイジェスト2015NO.4参照)
◆ボールコンプレッション
ボールの硬さを表現する場合一般にはドライバーやアプローチで打った時の打感のことをいいますが、ボール圧縮度による硬度を表すコンプレッション値(ボールを2.54mm押しつぶすのに要する力)というのがあります。
アベレージゴルファーではプロが使用する90前後のものはインパクトで十分つぶすことができないためボール速度が上がらずスピン量も多くなり曲がりやすくなります。
ヘッドスピード40m/s前後のゴルファーでもつぶれやすいボールを選択することで適正なスピン量に抑えられ飛んで曲がりにくい弾道にすることができます。
参考値として、
タイトリストのPro V1xが88
ゼクシオのエアロスピンが70
キャロウェイのクロムソフトが65
テーラーメイドのRocletballzが65
タイトリストのDT Soloが64
スリクソンのSoft Feelが56
キャロウェイのSupersoftが38
ウイルソンのDX2ソフトが29
と言われています。自分にあったボールを見つけるのもゴルフの楽しみです。
※「柔らかボールはどこがいいの?」(週間ゴルフダイジェスト2015NO.21参照)
飛距離に影響する要素
- ボール初速:70%(これが大きいボールが良く飛ぶ)
- 打ち出し角度:20%(キャリーを出すためには高い打ち出しが必要)
- スピン量:10%(ヘッド速度が遅めの人は、少ないと飛ばなくなるが、ランは多くなる)
※「今より20Y飛ぶボール選び」(週刊ゴルフダイジェスト2017NO.17参照)
◆泥んこボール
雨や霜、雪解け水の影響でボールに土が付くことがあるが、土の影響で球筋はどう変わるか
※「泥んこボールはどう飛ぶの?」(週間ゴルフダイジェスト2016NO.6参照)
- トウ側は左に曲がるので、少し右を向くかフェースを開き気味に打つ
(泥の無い側に曲がる) - ヒール側は右に曲がりやすくばらつきも大きい
(少し左向きに構えるかフェースを閉じて打つ) - フェース側はスピン量が減り曲がりは少ないが縦距離のコントロールが難しい(番手をあげ低い弾道で手前から転がす)
- 真上側は泥の影響は少ないがややスピンが減ったドローンとした球になる
- 「プリファードライ」や「ウィンタールール」 が設けられているときはボールを拾い上げて泥を拭き、リプレースするのがよい
- 泥による曲がりはボールスピードが速いほど、バックスピン量が少ないほど影響が大きくなるので、ヘッドスピードが速い人や長いクラブの時は影響が大きくなる
◆風の影響を科学する
風の強さでどのくらい飛距離や曲がり幅が変わるかを知ることで、方向や落とし場所の参考になります。
※「風の影響を完全シミュレーション」(週間ゴルフダイジェスト2019NO.17参照)
風力階級 | 風速(m/s) | 陸上の状況 |
---|---|---|
1 | 0.3~1.5 | 煙がたなびくが風向計での計測値は出ない |
2 | 1.6~3.3 | 顔に風を感じる、木の葉が動き、風向計の計測可能に |
3 | 3.4~5.4 | 葉っぱが絶えず動いている、軽い旗がはためく |
4 | 5.5~7.9 | ホコリが舞い上がり、木の枝が動く |
5 | 8.0~10.7 | 小さな木がゆり動く、水面にさざ波が立つ |
6 | 10.8~13.8 | 大きな枝が動き、電線がうなり、傘をさすのが困難に |
7 | 13.9~17.1 | 木全体がゆれ、風に向かって歩くのが困難に |
- 向かい風のほうが追い風より影響が大きい(5Yの風の時7Iは-17Y:+14Y)
- PWは数値自体は7Iより小さいが、割合としては影響が大きい
- 高く上がると滞空時間が長くなり、影響を大きく受ける
- 風の影響は前後だけでなく、左右の曲がり幅も関係するので、真っすぐな低い球が影響が少ない