アーク撮影とデータ処理の基礎

はじめに アーク撮影技法の基礎知識

 アーク溶接現象を撮影するための基礎知識を紹介します。一般的には、カメラやパソコンなどの撮影機材を溶接現場に持ち込み撮影することになります。アーク溶接は、1cm程度の非常に狭い空間が撮影対象となり、眼に有害な1万度を超える明るいアークが発生し、条件によっては高温のスパッタも飛散する環境での撮影となります。希望する大きさの画像を満足できる画質で撮影するためには、撮影する対象であるアーク溶接と撮影機材であるカメラに関する知識と、さらに使用するパソコンと撮影した画像データに関する知識が必要となります。

 撮影対象が、(1)アーク溶接をしている全体の状況か、(2)トーチを含めた比較的狭い領域か、(3)アークプラズマあるいは溶融している領域(溶融池)かによって、撮影の仕方が変わります。全体の状況を撮影する場合には、アークが発生している領域は非常に小さく、また、ある程度の距離がありますから、アーク光の輝度は距離の二乗に反比例して減衰します。アークが局所的にオーバフローしても全体の明るさにはほとんど影響がなく、比較的簡単に欲しい画質と大きさの映像を撮影することが可能です。
 撮影する領域が狭くなるのに伴い、周囲の明るさに対してアークの光が強くなり無視できなくなります。撮影する領域を希望する求める画質で撮影することは難しくなります。特に、溶融している領域を明瞭に撮影するためには、カメラをアークが発生しているすぐ近くまで接近させる必要があるため、全体のコントラストだけでなく、アークによる熱やスパッタに対する防護も必要となります。全体の状況からアークに接近するにつれて背景が撮影されなくなる様子にも注目してください。
 21世紀に入ってからの情報と通信技術やAI技術の進展は目覚しく、非常に便利な生活ができています。しかし、多くの技術がブラックボックス化しており、使い方しか分からない状態です。高速度ビデオを用いてアーク現象の観察する場合も、メーカーが丁寧に教えてくれ、問題なく使用できます。利用する時に、知っておいたほうが好ましい情報を基礎的に紹介します。
 右図にGMA溶接プロセスを高速度ビデオカメラで撮影する概念図を示します。アーク現象は、狭い領域で高速度かつ比較的規則な繰り返し現象ではあるものの、揺らぎが大きく、強力な発光現象を伴うことが、特徴です。
 最近の高速度ビデオカメラは非常に高性能であり、価格も一般的に使用可能な額になり、使用頻度の高い機器となりました。高速度ビデオを使いこなす上で、有用と考えている基礎的な事項について紹介しています。また、英語版をリニューアルし、動画一覧のリストを作成しています。この一覧から高速度ビデオで撮影した映像を再生できるようにしています。

次ページ   2014.10.01作成 2026.01.12改定

小川技研サイト
アーク撮影技法

・3Kの代表的職種であるアーク溶接は、実は非常に美しい現象を伴っています。
・デジカメやスマホが飛躍的に発展し、誰でもどこでも簡単に美しい映像を撮影し、それをネットで発信できます。
・溶接現象の撮影は花火の撮影に似て、明る過ぎるアーク領域と背景の暗い領域との明暗差が大きすぎることが特徴です。
・また、アークの発光スペクトルは、連続的ではなく、離散的です。
・デジタルカメラや高速度ビデオで溶接現象を撮影・計測・解析するために必要な情報を紹介します。
・「視覚の認知生態学/生物たちが見る世界, 種生物学研究第37号, 種生物学会, 文一総合出版」は、光受容に関する生体反応や遺伝子に関する基礎的な知識等を、周辺の常識を含めて分かりやすく解説しています。
・人の感性について考え直すのに、次の本もお勧めです。「音と文明/音の環境学ことはじめ」, 大橋力, 岩波書店