表色系
色は感応的な量ですが、工業化された現実社会で用いるには普遍的な物差し(色を定量的に表す体系)が必要となります。その物差しとして、色を記号や数値で表現する体系を表色系(Color Specificaton system)と呼び、通常は三つの方向性を具える色空間で表現されます。表色系には、色の分光特性をもとにして決めた混色系と、人間の知覚する色を記号や色標などを用いて定性的に規定した顕色系とがあります。混色系は色を心理物理量として捉えて色刺激の特性を定量化した系で、色の情報を数値として伝達する場合に適しており、国際照明委員会(CIE)が認定したRGB表色系やXYZ表色系があります。顕色系は、色を三つの特徴に従って規則的に配列して、その間隔の整合性を高めるよう調整し尺度を提供するもので、マンセル表色系やNCSが代表的な例です。
色の表示には、(1)正確な色を表記することと(2)配色を調和することの、二つの目的があります。マンセル表色系は正確な色を表記することを目指し、オストワルドシステムや日本で多く用いられているP.C.C.S (Practical Color Co-ordinate System)は適切な配色の実現を目指しています。3原色で代表される3つの変数があれば、数学的にはすべての色を表現できます。実際的にはすべての色を表示する必要のない場合や実用上の便宜のために2変数以下あるいは4変数以上を用いる色空間があり、それらの目的に応じて様々な変数の取り方もあり、多種多様な規格が併存しています。
人は光の波長そのものを知覚しているのではなく、色を感じる三種類の錐体から出力される信号の比率を知覚しています。実際には社会の中で共同生活を営む上で共通の感覚を共有しなければ不都合が多いために、心理的な補正が加わっています。例えば昼と夕方とでは地表に到達する太陽の色が違うにも関わらず、同じ物は同じ色に見えるように、脳内で多少の光源の色度の違いを補正しています。このため太陽光と異なる波長分布を持つ照明下でも脳が「白色である」と考えるものは白色と感じます。
太陽光と同じ波長分布の光が最も自然な白色とされますが、それより青成分の強い光を「爽やかな白」と感じる人が多く、モニタ上に表現される白色は純白より青味が強い色になっています。タオルや衣類に蛍光処理がされているのも適当量の青味を加えて多くの人に「爽やかな白」と感じてもらうためです。
次ページ 2014.10.10作成 2017.1.24改定