4. 表色系  4.1 色いろいろ

4.1 色いろいろ

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 夜間など十分な光の得られない環境では、赤を感じる錐体の機能が特に低下します。そのような環境にあっても、赤色であると知っているものは赤く見ます。例えば、林檎を黒く塗ったものを暗い環境下で見せると、赤く見える、といった現象が起こります。これらについては、錯視の節で詳しく紹介します。
 また、太陽光の波長分布は季節や時刻によって異なり、周囲に反射した光によっても影響されます。例えば周りが青い物ばかりならば反射光によって環境光は青みが強くなります、しかし、周囲の色に影響されて物の色が違って見えては困ることが多く、このような場合にも出来るだけ一定の色覚を保つために脳内で補正していると考えられています。
 色の見え方は光源や物体によって変化しますが、色味とその濃淡(鮮やかさ)や明暗を具えている点で共通し、これらは、色相、彩度、明度(色の三属性)と呼ばれます。
・色相(Hue:ヒュー)は赤、黄、緑、青といった色の様相の相違であり、スペクトル、人間の感覚等の基準に基づいて分類・配置します。この総体を順序立てて円環にして並べたものを色相環(hue circle)と言います。
・彩度(CHROMA:クロマ又はSaturation:サチュレイション)は色の鮮やかさを意味し、色の純度・飽和度のことです。それ以上彩度や明度を上げようとしても不可能なレベルを飽和度と言います。物体の分光反射率が平坦になる程、彩度は低く、また、色相によって彩度が高いときの明度が異なります。
・明度(Value:バリュー又はBrightness:ブライトネス)は色の明るさを意味し、その高低は物体の反射率と高い相関性を示します。
 白や灰色、黒のグレースケールは、明度のみで区別され、色相がなく彩度も0となり、無彩色と言います。グレースケール以外の色は三属性すべてを持つ有彩色となります。有彩色の中で色相ごとに、最も彩度の高い色・飽和度の高い色を純色と言います。純色の内、他の色との混合で作り出せない色が原色です。右図は黒から白までを表示した例であり、無彩色の秩序ある配列は、白→黒、或いは黒→白の一方通行で、図のように直線的な配列になり、グレースケールとも言います。人間の目での識別範囲とされる150階調といわれています。下から上に表示する階調を変化させていますが、階調ごとの明度差が分かりますか。人間の目は不可思議なもので、二つの物体が離れていると、両者の明度差はあまり判断できませんが、境界を接していると、微妙な差を識別できます。
 明度の段階(階調)を8ビットで表現する場合には単純に等間隔で区切ります。一方、「刺激が等間隔で変化して感じられる為には、刺激は等比級数的に増えて行かなければならない」と言う「ウェーバー・フェヒナーの法則」を採用する場合には、図の一番上のブロックのような等比級数的な変化になります。
 太陽光をプリズムで分光させてスペクトルを取り出すと、短波長側に青、長波長側に赤、その中間に黄がきます。そして青と黄の中間に緑が入ります。絵を描く場合、昔の画家たちはパレットの上に三つ以上の「原色」の絵具を置いて色、例えば赤、黄、青、緑を混ぜていました。この四色はその「色味」だけしか感じられない色であり、心理的な原色として認知されています。橙(だいだい)色は、その中に赤と黄の色味を感じます。しかし、赤と緑とから作成された黄は、黄を見て赤と緑を感じることはほとんどありません。
 赤・黄・青の三色を原色として使った場合、これらの混合で得られる色の領域は比較的小さなものとなり、なかでも鮮やかな緑・シアン・マゼンタを作ることは困難でした。赤・黄・青の配列が分光波長的には波長間隔がそろっているにもかかわらず、知覚的な色相環では赤・緑・青の配列を均等と感じるためです。減法混色を用いる三色印刷・四色印刷やカラー写真で、シアン・マゼンタ・黄が色の三原色として使用されるのは、赤・緑・青が知覚的に均等な配列と感じられるためです。
 また、人間の眼の中で色を感じる器官は3種類あり、赤を感じる器官が一番多く緑を感じる器官の2倍、青を感じる器官の40倍の個数が存在すると説明されています。これらの器官からの刺激信号を脳で演算し色を識別しています。そして識別できる色は、数百万色とも言われています。これらの色を秩序良く配列する基礎・枠組みになるのが、無彩色と純色です。 ほとんどの色は、無彩色と純色の中間に位置します。 人間の目は、およそ150階調の無彩色と、300種の純色を識別できると言います。とは言いながら、色を識別しているのは脳の中ですから、その時の物理的および心理的状態により判断の基準は揺れ動きます。錯視のように意図的に判断基準をずらすことも可能です。

次ページ   2014.10.10作成 2018.4.24改定

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Weber-Fechner Law

・感覚に関する精神物理学の基本法則で、中等度の刺激について五感のすべてに近似を与えることが知られています。
・エルンスト・ヴェーバーは、気づくことができる最小の刺激差は、基準となる基礎刺激の強度に比例することを見いだしました。
・グスタフ・フェヒナーは、恩師のヴェーバーの法則の式を積分することにより、心理的な感覚量は、刺激強度ではなく、その対数に比例して知覚されることを見いだしました。
・最近の経済学でも、損得に関する感情を、自分を基準として対数比を取ることで考えるようになっています。つまり、稼げば稼ぐほど、もっと沢山なければ満足できなくなる感情です。

プリズム分光

・緯度があまり高くない日本にいると分からない感覚ですが、ヨーロッパ北部高緯度地域の冬は、昼が短く寒くて暗いつらい季節です。
・一方、太陽光は水平近くの角度で差し込み、太陽光のスペクトル観察は比較的容易に室内で行なえます。ニュートンやゲーテがプリズムやレンズを駆使して光学の研究に励んだのもむべなるかなと感じました。
・緯度の低いイタリアではスペクトル観察はむつかしく、イギリスやオランダでは比較的簡単に観察できます。