光波長と色の基礎知識
地球上には、太陽から到達する電磁波や人が通信用に用いている電磁波など様々な種類、波長の電磁波が存在しています。これらの電磁波のうち、人間の目で見える波長のものを可視光線あるいは光と呼びます。JIS Z8120では、可視光線に相当する電磁波の波長を、短波長側がおおよそ360〜400nm、長波長側が760〜830nmと定義しています。可視光線より波長が短くなっても長くなっても、人間の目には見えません。可視光線より波長の短いものを紫外線、長いものを赤外線と呼びます。
人が通常眼にする光は、様々な波長の可視光線が混在した状態で、白に近い色に見えます。その光が物体に当たり、物体表面の特性に応じて反射された光を目にしています。百聞は一見にしかずとのことわざ通り、人が五感で感じる情報の90%以上がこの可視光からと言われています。プリズムなどを用いて、可視光線をその波長によって分離すると、それぞれの波長の可視光線が人間の目には異なった色を持った光として認識されることがわかります。各波長の可視光線の色は、日本語では波長の短い側から順に、紫、青紫(藍)、青、(青緑)、緑、(黄緑)、黄、黄赤(橙)、赤で、俗に七色といわれます。光の分類は連続的な移り変わりであり、文化によって分類の仕方は異なり、虹を5色やそれ以外の色に分類する国々もあります。波長ごとに色が順に移り変わること、あるいはその色の並ぶ様子を、スペクトルと言います。太陽光は大気圏中での反射・散乱・吸収などによって平均4割強が減衰して地上に到達します。本来は連続的なスペクトルですが、大気圏でよく吸収あるいは散乱される波長が特に少ないスペクトル分布となります。
人は太陽光の光が物体に当って反射した色を見ています。特殊な光源を用いない場合には、目に入る光の強度の最大値は太陽の光強度に依存します。太陽光の届かない夜などは、目に入る光は非常に弱くなります。目に入った光は角膜、水晶体、硝子体を通過し、網膜にある視細胞で化学反応を経て電気信号に変換されます。視細胞には、明暗のみに反応する約1億2000万個あるの桿体細胞と、概ね3種の色彩(波長)に反応する約600万個の錐体細胞があります。光量が多い環境では主として錐体細胞の作用が卓越し、逆に光量が少ない環境では、桿体の作用が卓越します。非常に明るい時には瞳孔は小さくなり、錐体細胞に到達する光量を適度に調節します。暗くなると、眼球の虹彩を収縮して瞳孔を広げ、水晶体を通る光量を増やすよう調整します。さらに暗くなると、脳の知覚領域に到達する情報は錐体細胞から捍体細胞へと切替ります。完全に切替わるまでに一定の時間(30-60分)を必要とし、暗順応といいます。明るくなる時には、逆の反応(明順応)が生じますが、この反応は短時間(30-60秒)で完了します。これは、桿体細胞内の化学反応(ロドプシンの合成・分解)が速いためです。
夜間など暗い環境では、桿体が反応し、色の識別ができず明暗のみを識別します。カメラの感度が大幅に性能向上し、人の目に見えない物体も撮影可能になっていますが、見たいものを撮影するには、まだまだ工夫が必要です。
次ページ 2014.10.10作成 2017.1.23改定