2.3 画像解像度
画素と回路に対する期待
画素については、サイズ、速度、感度、画素数といった基本性能の向上が重要です。画素の微細化と素子へのデータ処理回路組込が進むにつれ、高感度化は困難になります。画素と回路の各々の製造プロセスは本来反発する性格があります。たとえば、画素の集光率を高めるために光導波路を組込む場合には、画素側では(1)ドライエッチング、(2)シリコン結晶のダメージを回復のアニール(熱処理)工程が必要になります。一方、回路側からすると、トランジスタのパラメータが変化する熱処理プロセスを製造工程に組込むことは好ましくありません。CMOSでは、画素と回路が同一シリコンに形成されるために、画素側と回路側とで相反する特性を追及する際には、双方に制約が発生します。
製造工程で各種の要素は、同一シリコンウエハースに積層的に形成されます。一例として、オンチップカラーフィルタやマイクロレンズなどは、組織ムラ発生を防ぐために、画素領域のみならず回路領域にも、同時形成します。除去行程の方が簡単なため、回路領域で不要なフィルタなどは形成後に取除きます。この作業が非効率であることに代わりはありません。プロセスライン世代による微細加工能力相違の制約もあり、微細化により達成した最適なロジックプロセスを旧世代のラインでは利用できないなどの問題もあります。
カメラ出力を位置情報検出に使用する場合は、撮像素子の解像度が重要となります。従って30万画素(640x480)のカメラより、130万画素(1280x1024)さらに200万画素(1600x1200)、500万画素(2432x2050)、1600万画素(4872x3248)と解像度が高いほど優れているといえます。反面、画素数は読取速度に反比例すると同時に、有効受光面積の減少により感度にも反比例します。同一サイズの素子を比較すると、高画素の素子ほど光電変換効率とA/D変換の倍率が増加しないと、同一の出力値を得ることができません。これは高密度ほどノイズの影響が高くなることに相当します。
CCDはノイズが少ないことが特徴ですが、明るい部分の上下に縦に白いラインが発生するスミアや残像などの電荷転送に伴うノイズが存在します。CMOSは個々の画素で増幅やA/D変換を行うため、製造時のトランジスタ特性(しきい値)がばらつき、固定パターンノイズが支配的となり、それらが欠点として考えられてきました。しかし、製造技術と回路技術の改良により、これらのノイズは劇的に減少し、動画撮影の主役となっています。感度の向上もありますが、CMOSでは画素ごとにアンプで増幅するので、暗電流ショットノイズのような、光が当っていないのに流れてしまう電流は、画素ごとにばらつき、また、不規則にゆらぎます。これは白色ノイズなので、蓄積量は時間のルートに比例します。一方、信号電荷の蓄積量は時間に比例します。このため、S/N 比は時間のルートに比例して改善でき、撮影後のデータ処理によりノイズは除去できる場合があります。
ダイナミックレンジは、カメラの濃度分解可能範囲を示し、次式のように可能最大出力値/可能最小出力値(ノイズの総量値)をデシベル表記します。
ダイナミックレンジ(dB)=20×log(最大出力値/ノイズの総量値)
撮像素子画素ピッチの推移については、以下を参考にしています。
H. S.Wong, “Technology and Device Scaling Considerationsfor CMOS Imagers,” IEEE Trans. Electron Devices, vol. 43,no. 12, 1996.
SONYのHP:CMOSイメージセンサー、ソニー半導体技術情報誌cxpal、2012春号、vol.92、SONYのHP
「最高画質」を考える上で着目されるのが、レンズの描写性能を阻む「光学ローパスフィルター」の存在です。現在、フォーサーズ以上の大きなセンサーサイズのほとんどのデジタルカメラで、モアレを防ぐための光学ローパスフィルターが使用されています。センサーサイズが大きくなると、画素ピッチが広がり、シャープな光学像が得られますが、モアレの発生率も上がります。これを低減するために、レンズとセンサーの間に光学ローパスフィルターを使って、高周波成分・つまり細かいディティール部をボカすことによってモアレの発生を軽減しています。
日常的にモアレの存在を眼にするのは、テレビ画面で出演者の衣服に生じているざらつきです。高級な衣装を身にまとっている場合には、繊維の網目が走査線と異なる角度になる場合にざらつきが顕著に発生します。
次ページ 2014.10.10作成 2017.6.23改定