2.素子と高速度ビデオ 2.4 入射光に対する出力の直線性

2.4 入射光に対する出力の直線性

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 カメラの非直線性は、通常、理想的な出力直線(ダーク時の出力と飽和時の出力を直線で結んだ直線)からの乖離(離脱)率として表現されます。光子のシリコンへの吸収は輝度に対して理想的な直線性を示すため、フォトダイオード単体の直線性は非常に優れています。画像センサーとしての直線性は、フォトダイオードへのフォトンの受光過程、フォトダイオードから出力アンプへの搬送路の効率、出力アンプの直線性によって決まります。フォトダイオードそのものの直線性が優れていても、微少入光量における電子シャッター応答のゆらぎ、フォトダイオードから転送路への伝送ロスやラグ、センサー内蔵出力アンプまでの伝送路でのロス、内蔵アンプの非直線性がセンサー出力の直線性を損なう要因となります。しかし、一般的にセンサー出力の直線性は優れており、計測用のセンサーでは99%程度の直線性となっています。
 しかし、センサー出力を処理するアナログ回路やADコンバーターの直線性が確保されにくいため、直線性は悪くなります。通常のデジタルカメラでは、この直線性をガンマカーブと称し、これを故意に非直線にすることにより、肉眼で見た時に鮮やかに見えたり、美しく見えるように変形しています。また画面内の全画素に対して同一のガンマ特性を持たせるのではなく、個々の画像の状況に応じて個別画素のガンマを変更したり、RGB出力値の比率を変更することにより見た目の画像が美しくなるような処理をしています。これらの処理はカメラメーカー毎の極秘ノウハウであり、青空が美しいとか顔色が鮮やかなどと宣伝され、内部処理のほとんどが非公開となっています。また現在では、センサー出力のアナログ信号処理は、センサーメーカーまたはサードパーティーが用意したチップセットと称されるASIC(専用LSI)で実行され、カメラメーカーは単にアセンブルするだけで、通常のカメラメーカーがカメラの直線性を設定することはほとんどできません。
 計測用と称するカメラでも低価格のものでは、ほとんどがチップセットによるアナログ処理を行っており、直線性が確保されていません。結果的に、市販のデジタルカメラを計測に利用する場合には、あらかじめ校正を確実に実施するなどの注意が必要となります。環境温度特性は公表されていませんが、画像素子は基本的にフォトダイオードのアレイであり、フォトダイオードの出力は環境温度によりドリフトします。
 濃度計測にデジタルカメラを使用する場合はこのことを理解しておく必要があります。しかし、高速度ビデオなどの画像素子部の温度は、使用時はほぼ一定な温度となり、屋外の特殊な環境で使用する場合以外はさほど神経質になる必要はありません。
 カメラの非直線性は、理想的な出力直線(ダーク時の出力と飽和時の出力を直線で結んだ直線)からの乖離(離脱)率です。
そのカメラ直線性は

直線性=100−乖離(離脱)率

として表現されます。
 溶接現象の撮影では、光量の強大なアーク領域から、微弱な背景部までの広い光量範囲が必要です。右図に素子に入る光量と発生する電荷(信号とノイズ)の例を示します。アンプの直線性は高いのですが、光が少ない場合に、発生する信号より雑音レベルが高くなると意味のある画像は出力できません。また、光の量が高すぎると発生する電荷に限界が生じて直線性は損なわれます。

次ページ   2014.10.10作成 2017.1.24改定

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ガンマ補正

・ガンマ補正とは入出力機器のガンマ値(画像の階調の応答特性を示す数値)に応じた最適のカーブに画像の階調を補正することです。

・画像出力機器の入力値(電圧やデジタルデータの数値)と出力値(画像の明るさ)の関係は、直線関係ではなく、0を最小の明るさ、1を最大の明るさとした場合の
 V_{out}=V_{in}^γ
のカーブに近似します。この時の冪乗の指数γがガンマ値です。

・NTSC方式カラーテレビジョン送では、受信側のガンマ値を2.2と想定しており、最終的な出力がγ=1の階調になるよう予め送信側でγ=1/2.2(≒0.45)のガンマ補正をかけていました。