7.人の目と機械の目     7.3 局所的改善

7.3 局所的改善

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 輝度の低い領域を強調する輝度変換方式として、指数変換(γ補正)があります。γが1より小さい場合には、相対的に輝度の小さい(暗い)区間のダイナミックレンジが拡大されます。画像の輝度分布に依存して、指数を試行錯誤的に調節して適切な画像になるように調節します。一般的にはこの変換で、明るい部分のコントラストが失われます。逆にγが1より大きい変換では暗い部分のコントラストが失われます。

 上図左から右に、それぞれγが1/3,1/2,2.0の場合の変換例を示します。ここに示した映像でγ補正の特徴が理解できます。
 人の特性として、明るすぎるところ及び暗いところでの明るさの微妙な差は、あまり認識しないという特徴があります。安全快適に生活するためには、広いダイナミックレンジの光刺激に対して、良好な応答特性を有する必要性があり、このような機構が獲得されたと考えられます。このような領域で明るさの微妙な差を増幅して明暗対比を明確にすることで、側抑制機構と呼ばれる人の感性を利用した画像の強調ができます。横軸に輝度、縦軸に人の眼の感度を対応させた時、S字型の特性となります。
 風景などの一般的な画像は、その輝度分布が画像全体の平均輝度付近に集中します。人の眼は、周囲の全体的な明るさに順応させて、明暗のコントラストを決めています。この特性を利用して、まず画像の全体的な明るさを画像の平均輝度で代表させます。つまり、平均輝度が表示系のダイナミックレンジの中央に位置するように決めます。結果的に、輝度分布の中心が感度の良い中間部になると共に、ヒストグラムが平坦化され、大域的に強調される効果が出ます。また、中間部で線形変換を行うため、局所的なコントラストも向上します。
 暗部・明部ともにコントラストを改善するためには、得られた輝度をS字型の特性に沿うように補正すれば良いことになります。この応答を補正するため一つの方法が、次式で示す輝度変換です。

IU, IL: 数値的に想定される最大輝度・最小輝度(定数)
Imax, Imin: 局所近傍における最大値、最小値
αposi, αnega, βposi, βnega: 生理学的な定数
 また、局所領域のコントラストを改善する方法としては次式で示す線形変換方式もあります。

 これらの式はいずれも平均輝度が中間値に近い画像に対して適用することを前提に作られているため、平均値と中央値がずれ、平均値の128から大きくずれ、なおかつコントラストにも特徴のあるアークの映像にそのまま適用するのは困難です。
 右図に5x5の領域で局所コントラストを改善した方法の例を示しますが、左側の原画と比較すると、平均値に近い輝度の領域で変換が極めて不自然になっていることが分かります。

次ページ   2014.10.10作成 2018.11.4改定

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アークの特徴
・アーク領域は、他の領域より相当明るく、領域内に輝度の不自然な凹凸はありません。
・背景領域の平均輝度は低いのですが、ある程度変化に富んでいます。また、アーク光の反射による光量が、人の目には分かりにくいのですが、無視できない値になります。このため、その部分が強調されやすく、不自然になります。
・電極表面は、タングステンなどの再結晶による凹凸が存在します。また中心線上は下部のアークの反射が強くなります。このため、電極も少し違和感を覚える表示になりやすい、などの問題があります。
・電極の映像は表面からの発光と表面での外部反射光との和になります。アーク光は奥行き方向全ての総和となり、結果的に中央部の輝度は発光領域が広いため周辺部より明るくなります。実際にはアーク光は中心から半径方向に遠ざかると低くなる発光強度分布を持っています。アーベル変換などにより実際のアーク光分布を求めることが必要です。しかし、現時点のカメラでは、精度良くアーベル変換できるだけのデータ深度が測定値にありません。
分ける・繋ぐ
 意識・認識について考える途中で、発生学や分類学あるいは歴史の勉強にのめりこんでしまい、脱線ばかりしています。
 フィリップ・クリルスキー著, 矢倉英隆/訳"免疫の科学論/偶然性と複雑性のゲーム"(みすず書房)と三中信宏著,"思考の体系学/分類と系統から見たダイアグラム論",(春秋社)はお勧めの書籍です。一見技術屋には必要ない知識のように思えますが、仕事を進める上で有意義な内容が盛りだくさん記載されています
 成り行きで水中溶接・切断技術の関係しましたが、結局納得できる結果を得ることは出来ませんでした。しかし、非常に幅広い分野の勉強が出来ました。定年により自由に本を読むことが可能になり、今までの経験がより深く理解できるようになった気がしています。