7.人の目と機械の目    7.4 擬似カラー表示

7.4 擬似カラー表示

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 擬似カラー表示の場合には、温度分布のような輝度変化のみに着目した表示と、アーク溶接現象に適した、明るいアーク領域、暗い背景領域、そして中間の電極領域がそれぞれ明確になるような表示形式が考えられます。右図の左に単純に擬似カラー表示したアークの映像の例を示します。この表示方法では輝度の違いは明瞭に表現でき、電極表面やアークの周辺領域での輝度変化ははっきり判別でき、アーク中心部がほとんど飽和していることなどが分かります。しかし、肝心の溶融池の状況は逆に分かりにくくなります。
 擬似カラーへの変換方法をよりきめ細かくした例を右図の右に示します。電極領域が背景領域に比較して、判別可能なだけの輝度を有していることと電極直下のアーク領域はほとんど飽和していて内部の輝度に有意な差がないことが分かります。電極表面部分の観察ではもう少し絞りをあけるか露出時間を増加させて、光量を増加させた方が良いことが分かります。アーク観察が主眼の場合には、逆に光量を絞る必要があることが分かります。
 右図の左は2種類の異なる輝度の平滑化処理を施した画像の例です。輝度変換により電極と溶融池の両者を判別しやすくしています。
 右図の右は輝度の平滑化処理を施した画像に等高線を重畳させた例です。2種類の異なる輝度変換を実施し、電極と溶融池の両者を判別しやすくしています。このような配色なら、等高線はさほど全体認識の邪魔にはならないと考えます。等高線表示もきちんと処理すればきれいに弾けますが、ここでは単純に輝度だけで描いています。
 本節では明るさの情報のみを用いてより分かりやすい画像表示を行うにはどのようにしたらよいのかについて紹介しています。擬似カラーを用いて輝度の等高線を強調した画像では、輝度分布の情報がはっきりしすぎて、肝心の全体の映像の情報が分かりにくくなってしまいました。輝度がほとんど0の背景部を除外したとしても、電極、アーク、溶融池(母材)と輝度の異なる3つの領域を如何に分かりやすく表現するのが本節での主題です。
 白黒画像の情報を分かりやすく表示するには擬似カラーが適していますが、本来の映像とあまり違和感を持たずに済み、なおかつ、異なる輝度分布を有している領域を分かりやすく表示する、換言すれば、領域ごとに最適化して輝度変換を行うためには、領域を判別する必要があります。アーク溶接現象の場合には、低い輝度の背景と高い輝度のアーク領域は比較的簡単に同定できます。ここまでに示している画像は元々800×600画素の映像から中心部の400×400画素を切り出していますので、次節では元々の画像で領域を分けていきます

次ページ   2014.10.10作成 2019.4.19改定

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アークの最適画像
・見た目にきれいだな、と感じるアーク映像では明るいアーク領域内の輝度差は判別できません。アーク発光が強烈で、その輝度は奥行き方向の光量の総和ですが、それ以外の光は表面からのみの発光であることが原因となっています。
・計測などに使用する画像では最高輝度が250以下になるように撮影する必要があります。
・カメラ撮影では、絞り シャッター速度、NDフィルター、すべて倍倍で変更します。このため、最適条件では、最高輝度が130程度にしかならない場合も有り、微妙な調整にいつも苦労します。
虫の目
・海野和男さんの "虫の目になってみた/ たのしい昆虫行動学入門(河出書房新社)"には、撮影に関する貴重な情報と色に関する面白いエピソードが満載です。
・時間に追われがちな現役時代には、異分野の書籍をじっくり読む余裕が無く、今から考えると損をしたような気持ちになります。時間には限りがあるので、何処までの寄り道を許すかは人それぞれですが。