高気圧アークの諸現象

5.6 その他方法の諸現象

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水中プラズマ切断
 まず、圧力が増加するとプラズマアーク電圧が増加します。使用したプラズマトーチのオリフィス(プラズマアークが加工材の方へとトーチから噴出する孔)が4.2mmと十分小さく、切断ガスは十分圧縮されてトーチ内部の圧力も高くなっているため、水深の影響はあまり受けないのではと考える方も多いかと思います。切断に使用するのは主に移行式アークのトーチで、アーク(陽極点)は切断溝の内部に発生します。結果的にアーク長がかなり長いために、環境圧力の影響を強く受けます。オリフィスや関連部材の過熱による損傷を如何に避けるのかが重要な問題です。
 最大切断板厚は水深が増加すると減少します。アーク長が長くなりうる限界が水圧の増加と共に短くなると考えるのが単純です。水中でもアーク周辺は高温のガスであり、切断部の陽極領域近傍には水は存在しません。しかし、周囲の水の挙動は不規則で予測不可能です。また、水深圧力によりプラズマ部分全体は大きく緊縮され、プラズマ切断のアーク電圧は、人間が安全に作業できるとする作業電圧に比べ非常に高く、特に水深が増加するとアーク電圧もかなり増加します。

ウォータジェット切断
 海洋構造物の鋼管杭の切断などでは、コンクリートのグラウト工事が実施されてアーク切断が適用しにくい部材の切断に、アブレーシブジェットが有効であるという特徴があり、これらの切断への本格的な適用が期待されます。噴射圧力とアブレーシブを適切に選定することにより、コンクリート部のみの切断や、コンクリートと鉄鋼製の構造部材を同時に切断することが可能です。適用水深に応じたノズルを用いれば、水深1100m程度まで良好な切断が可能であり、水中構造物の補修作業の自動化に適しているとしていると言う報告もありますが、高圧雰囲気中では切断能力が低下するとの報告もあります。
 ウォータジェットの加工材への衝突速度が300m/s程度以上になると、研磨効果が明らかになって来ます。この衝突速度は大気中の音速並ですが、この速度を越えると、比較的硬い岩石の穿孔や切削が可能になります。衝突速度が速ければ速いほど、切削効果は顕著で、軟質材料の切断が容易に行えます。鉄鋼などの切断にはウォータジェットだけでは効率的ではないために、研磨材をウォータジェット中に混入したアブレシブ・ウォータジェット切断が適用されます76)。アブレシブ・ジェットは原子炉の解体や爆発性雰囲気中での鋼構造材料の切断を目的として、研究されました。原子炉の解体では、構造物表面層に付着している放射性物質を除去しておく必要があり、氷をアブレシブとして使用する手法が注目されています。

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目 次
オーロラ
 地球大気はほとんど電離していない中性気体(気体)です。100km程度の上空では気体密度は1/100000に下がり、太陽からの紫外線で分子は解離し、さらに原子は電離する。この電離した大気による希薄なプラズマ層(電離層)が、地上からの高さ約500kmまで、地球を覆っている。この電離層に太陽表面から放出されたプラズマが地球磁場に捕捉されると、磁場を歪ませて磁気嵐を起こすのと同時に、地球磁場に沿って磁場の集まる極に集中し、大気に含まれる窒素や酸素原子を励起させる。励起された原子(大気)は、元の安定状態に戻るときに光を出す、これがオーロラです。
 太陽表面で時たま巨大な爆発現象(太陽フレア)が観察され、これで放出された大量のプラズマが地磁気圏に到達すると、比較的広い範囲でオーロラが観察されます。