1.1 カメラの構造
アーク溶接現象を撮影する際に知っておくべき知識は、レンズの焦点距離と撮影される画像の大きさとの関係、カメラの撮像素子に入ってくる光の量を調節するための絞りと露光時間(シャッター速度)や撮影感度との関係、どの程度の範囲でくっきりとピントが合っているか(被写界深度)、などに関する知識です。まず、最も身近にあるデジタルカメラを例にとって説明します。画像の質に最も大きく影響するのが解像度です。高速度カメラでは256x256画素から1024x1024画素の範囲を良く用いますが、最近のデジカメではさらに画素数が大きくなり1000万画素を超すものも市販されています。
1眼レフのデジタルカメラを右の写真に示します。本節で紹介する画像の多くはこのカメラで撮影した溶接現象です。画素数は3072x2048で撮影していますが、実際の表示は縮小処理などを行い、小さな映像にしています。1cm平方程度の非常に小さい被写体を撮影するために、通常のレンズと撮像素子の間に接写リングを挿入して近くの像を拡大して撮影します。また、レンズの先端に光量を調節するためのNDフィルタやスパッタなどによる損傷を防止するためのフィルタを装着しています。通常のカメラのレンズ先端にはねじが切ってあり、レンズ先端に任意のフィルタをねじ込める構造になっています。口径の異なるフィルタを装着する場合には、ステップアップもしくはステップダウンリングを用いて口径サイズを変換することもあります。
右写真はレンズを外して内部を映した例です。一眼レフカメラの場合には、撮像素子とシャッターの前にピント合わせ用の反射鏡があり、ファインダー越しに撮影対象を見ることができます。撮影の瞬間にはこの反射鏡が跳ね上がると同時にシャッターが開いて撮像素子が露光します。レンズは撮像素子の大きさにより、必要な直径が定まり、一眼レフカメラの場合にはバヨネット方式のレンズが一般的に用いられています。この方式のレンズは、3〜4箇所の爪部分がマウントとレンズ接合部につけられており、ボディ側にレンズ側の爪を差し込み、そのままひねれば装着できます。脱着が容易で、フォーカスや絞りと連動させる機構が簡単であり、一眼レフカメラのほとんどの機種はこの方式を採用しています。バヨネットの語源はソケット式の銃剣(Bayonet)を銃に装着する動作とレンズを装着する動作が酷似していることから来ています。高速度カメラは画像素子サイズの大きいものが多く、バヨネット方式のFマウントがよく使われます。
ビデオカメラや防犯用CCDカメラ、内視鏡を始めとした多くの光学機器には、ねじ込み式のCマウントレンズもよく使用されます。Cマウントは 内径25.4mm(1インチ)、ピッチ0.794mm(32山/1インチ)、フランジバック17.526mmという寸法構造です。Cマウントは、昔高速度カメラにもよく使用されていた16mmシネカメラ用です。最近では撮像素子に用いられるCCDセンサーやCMOSセンサーが小型化し、カメラ自体も小型化され、レンズの焦点距離を短くする必要からフランジバックを5mm短くしたCSマウントもよく使われています。ねじの構造自体は同一で、同じレンズを使用することができます。
次ページ 2014.10.10作成 2017.1.22改定