9 解析目的とデータ構造
右図はGMA溶接のある瞬間の映像です。高速度ビデオではこのような映像が短時間に多数枚撮影され、取得した大量データから撮影目的に応じて、実際に生起した現象が解析されます。前章「高速度ビデオ撮影法」で、高速度ビデオで撮影する上での問題点やどのような現象が解析できるのかについて説明しました。本章では取得したGMA溶接現象データからどのように解析していくのかについて説明を行います。
まず、高速度ビデオのデータを解析するときの基礎となるデータ構造についておさらいをしておきます。右に示した一枚の映像が連続的に且つ高速度で撮影された2次元データが多数積み上げられるのが高速度ビデオの特徴です。高速度ビデオの映像データは下図に示すように、各瞬間の一枚の映像を連続的に積み重ねた構造となります。白黒撮影の場合には、1画素あたり8ビット以上の二次元の映像データの積み重ね、カラー撮影の場合には(RGB)3個セットのデータが積み重なります。
高速度ビデオのデータはすべてデジタルデータですから、3次元のデータを任意の観点から解析することが可能です。モニタ画面は走査線の関係で左上から右に操作し、順次下に下がって言って右下が最終となります。ビットマップデータやビデオのデータは、右下図に示すように通常の幾何学的デカルト座標にのっとって、左下が原点となります。カラー映像の場合には、個々の画素ごとに(BGR)の順にデータが蓄積されます。
右上に示した映像から想像できるように、GMA溶接の解析では
(1)ワイヤ先端からの溶滴離脱機構の解明
(2)溶滴が溶融池へ到達するまでの溶滴に作用する力や
(3)それらとアークとの相互作用及び
(4)溶融池へ到達する瞬間の挙動などが
解析すべき課題となります。
通常の解析では、撮影開始時の画面を基準として、各画素ごとに時間軸方向についての平均、最大、最小、平均二乗誤差あるいは周波数分析などを行います。GMA溶接の解析では、上に上げた事項が解析すべき対象なので、鉛直軸と時間軸とのデータ解析が主流となります。
通常の画像解析では各時間ごとの映像に対してワイヤ先端領域の形状や溶滴形状についての解析を行い、時間的にその変化を追うのが主流です。解析にはいろいろな方法があり、それぞれ長短があります。時間的な変化挙動を解析するには、まず大局的に鉛直軸と時間軸とで解析を行い、大まかな性向を理解した後に、個々の精密な解析を実施する方が良いと私は考えています。次ページ以降で具体的な解析手法について説明します。
次ページ 2017.6.28作成 2017.7.20改定