8.高速度ビデオを用いたアーク現象の観察  8.1 データ構造

8.1 データ構造

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 高速度ビデオのデータを解析するときの基礎となるデータ構造について説明します。デジカメなどで撮影する一枚の映像を連続的に且つ高速度で撮影するのが高速度ビデオになります。高速度ビデオの映像データは各瞬間の一枚の映像を連続的に積み重ねた構造となります。白黒撮影の場合には、1画素あたり8ビットの二次元の映像データの積み重ね、カラー撮影の場合には(RGB)3個セットのデータが積み重なります。
 高速度ビデオのデータはすべてデジタルデータですから、3次元のデータを任意の観点から解析することが可能です。モニタ画面は走査線の関係で左上から右に操作し、順次下に下がって言って右下が最終となります。ビットマップデータやビデオのデータは、通常の幾何学的デカルト座標にのっとって、左下が原点となります。カラー映像の場合には、個々の画素ごとに(BGR)の順にデータが蓄積されます。通常の解析では、撮影開始時の画面を基準として、各画素ごとに時間軸方向についての平均、最大、最小、平均二乗誤差あるいは周波数分析などを行います。
 同じような解析が、X座標と時間軸平面の画面をY座標方向へ解析、あるいは、Y座標と時間軸平面の画面をX座標方向へ解析することも容易に行えます。静的な現象の観察であれば、カメラ自体を前後方向に移動させながら撮影することにより3次元空間の詳細な観察が行えます。また、レンズの先端にプリズムや回析格子などを用いることによりスペクトルの観察も可能となります。
 さて、実際に観察を行う前に、分解能と離散化誤差(計測精度)について検討する必要があります。まず誰でも最初に考えるのが、空間分解能と時間分解能についてです。画素数(データサイズ)×撮影速度は、使用するカメラによってほぼ一定値となります。接近して対象物を拡大して撮影する場合には、相対的に速い撮影速度が必要となります。現象によって最適な手法は異なりますから、ケースバイケースで慣れるしかありません。最初は空間分解能を少し下げて(比較的遠方からの撮影に相当)、もともと想定しているより10倍程度速い撮影速度で撮影し、現象の大まかな振る舞いを理解します。その後に最適な空間分解能の画面を設定すると比較的速く満足できる映像が得られます。
 明度分解能については、干渉フィルタの性能と関連しますが、絞りや撮影速度を調整して決定します。アーク現象の観察では一般的に光量は豊富ですから、更にNDフィルタを用いる場合が多く、絞りをある程度絞っても撮影可能な場合が多くあります。特に低速度で撮影する場合以外では、露光時間は撮影速度に応じた目一杯の露光時間で問題はないと感じています。実際のところ、それで映像が流れてしまう場合には、撮影速度そのものが遅すぎると考えるべきです。
 明度分解能については、少し複雑です。最近のカメラは、内部では12ビットでデータを扱い、8ビットのデータに換算して出力するようになっています。8ビットのデータに変換する時点でデータを最適化して出力する機能があり、データの値そのものを問題にする場合には、結果がおかしくなることがあります。さらに、光波長分解能も重要です。これらの要素は相互に関係(あるいは相反)していて、目的に応じて経験則を各自が確立するしかありません。
 解析処理の流れを右図に示します。観察目的に応じて、何を特徴的に観察すべきかが決まります。具体的な問題は上述したとおりです。高速度ビデオを利用する上での問題点は、膨大なデータ量です。画像処理の研究が開始された頃には、(256,256)画素が標準でしたが、高精細化の時代の流れに沿って画像サイズは拡大を続けています。またデータ自体も高精度化しています。現実にはモニタに表示されるデータは8ビットで制限されますが、温度計測などでは16ビットデータが望ましいところです。一方、高速度化も急速に進み、通常の高速度ビデオで130kfpsでの撮影も可能になっています。
 データの氾濫を防ぐには、特徴の抽出や必要な領域の切り出し、データの圧縮などがあります。解析結果や撮影結果を一目で分かるように処理しておくことは非常に重要です。しかし、データの圧縮に関しては慎重になるのが好ましいと考えます。以前は、ハードディスクなどの外部記憶媒体が高価で、データ転送速度も遅く、映像データを圧縮して記録していました。しかし、時代の流れ(進歩)は非常に速く、PCなどの機種更新にともなって、過去の圧縮形式をサポートしなくなる状況があり、結果的に、過去の映像データが読み取れない状況も発生しています。ハードディスクの低価格化とデータ転送速度の向上などを考慮すると、ビデオデータは未圧縮で記録しておいたほうが好ましいと感じています。

次ページ   2014.10.10作成 2017.10.25改定

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可視化プロセス

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・可視化の対象となるデータから、表現したい情報を抽出して構造化したメタデータに変換し、それを描画可能なデータへと変換し、さらにモニタへと出力する際に強調したいところを明確に際立たせる印象操作する視覚化変換の3段階のプロセスが一般的。

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 ラテン語のdigitという語は、指と数字と言う意味を持つ。日中は10進法で数えるのに対して、英米語は12までは特殊、13以後が共通の様式になり、算数の学力は低くなり勝ち
 幾何を習うと、後での学習に有利になる=数学的思考の訓練は頭に良。
 人間の技能習熟は、規則にしたがって学習することによるのではなく、多数のパターン認識と、それに反応する能力に依存する
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 特定のスキルのみを教え込むのには問題があ。
 ただし、訓練によりパターンを認識することは重要。投擲のように、複雑な動作と予測とを組合せる運動は「ものをつなぎ合わせる」左脳優位な能力を発達させる

計算のノウハウ

・高精細化の進展とともに、計算すべき画素の数は大幅に増加しています。その結果、画素一つ一つについて計算するより、ヒストグラムの情報を用いて計算するほうが有利になってきています。

・下記urlに画像計算のノウハウを簡単に例示しました。