11.レーザ切断

11.2 レーザ切断能力

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 ビーム切断は高エネルギー密度のビームを材料に照射し、材料を溶融もしくは蒸発させて除去する加工方式です。切断に実用できる高密度熱源としては、電子ビームとレーザがあります。電子ビーム切断は、真空中で熱電子を発生させ、その電子を電磁気的に加速・集束させて材料に照射して切断を行います。電子ビームは本質的に真空中で用いる装置です。大気中で使用する場合には、真空から大気圧に取り出す機構に問題があり、溶融金属を除去するために必要な運動エネルギーが小さいという欠点などのために、なかなか実用化までにはいたっていません。最近のレーザ技術の進展により、電子ビームを活用したいという意欲は減少しています。 レーザ光の幾何
 レーザ(Laser)は、Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation (誘導放射による光の増幅)の頭文字をとったものであり、特定の波長の光を同一位相に増幅しています。太陽光のように種々の波長の光の集合では、屈折率の違いにより焦点位置が異なるためにビームの集束には限界があります。レーザの場合には、すべて同一の波長でなので、レンズあるいは反射鏡を利用して高密度にビームを集束することができます。焦点距離が長くレーザ直径の大きな光学系では、レーザ光を集中できる距離範囲が短く、機器の精度が非常に高くないと安定した切断はできません。最近のファイバーレーザなどは焦点距離が非常に長いものが多くなっています。レーザ切断の場合には、切断ガス純度と速度とを補償するために、切断トーチと加工材料とのスタンドオフは3-10mmと短くなる傾向にあります。 レーザ切断の概念
 レーザの種類には、固体レーザ,半導体レーザ,気体レーザなどがあります。鋼材の切断加工には、高出力で連続発振が可能なCO2レーザやCOレーザが主に用いられています。穴あけ加工にはルビーレーザやYAGレーザが主に用いられます。
 穴あけ加工の場合には、10^7-10^9 W/cm2という高いエネルギー密度のビームを間欠的に材料に照射し、加工します。高エネルギー密度のビームの照射により、材料には空洞と円筒状の溶融部が瞬間的に形成されます。この状態でさらにビームが照射されると、空洞内の蒸気圧が急激に高くなり、溶融金属はこの圧力で高速除去されます。穴あけ加工の場合にはこのようなプロセスを繰り返して行うために、パルス発振が好ましく、アシストガスは特には必要としません。切断酸素純度の影響
 一方、切断の場合には、
(1)溶融金属を裏面方向に吹き飛ばすこと、
(2)アシストガスと加工材料との燃焼反応熱の利用、及び
(3)集光レンズの保護
などを目的として、アシストガスを利用するのが一般的です。
 切断能力に酸素ガスの純度が影響するのは、レーザ切断でも同じで、酸素純度が高いほど限界切断速度は上昇します。一般的な表現では、酸素純度が低下すると、限界切断速度が低下します。ドロスフリー範囲:切断酸素
 切断速度が高速である場合には、切断酸素圧力に関わらず、切断可能な範囲では、裏面にドロスはほとんど付着しません。切断速度が遅い場合には、溶融金属量が増加し、結果的に裏面にドロスが付着するようになります。ドロスが裏面に付着しないように吹き飛ばすには、遅い切断速度ほど強い圧力で切断ガスを流して、ドロスを吹き飛ばすことが必要です。
 薄板のステンレス鋼SUS304の切断を窒素ガスを用いて行う場合にも同様な傾向があります。トーチ内径が1.4mmΦと非常に小さく、ドロスフリー範囲:切断窒素レーザ光と切断ガス供給との兼ね合いでトーチ設計が難しくなっているのは理解できますが、トーチ構造とビーム径及び切断酸素直径を工夫することにより、より低圧側でドロスフリー条件が得られるのではないかと考えています。
 高密度エネルギービームを利用する加工法は、以下に列挙するような特徴を持っています16)。
(1)材料の硬度や剛性に無関係に加工できる。 (2)急速な加熱が可能であり、熱影響や変形が小さく、高速度で加工できる。
(3)ビームが電気的に制御でき、自動化や精密化に適している。
(4)非接触で加工ができる。

次ページ   2013.11.25作成 2016.4.25改定