11.レーザ切断

11.3 水中レーザ切断

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水中レーザ切断の原理図  金属の切断では、反射したレーザ光が人体(特に眼)に有害であることから、手動での利用はほとんど期待できませんが、ROVなどを利用した切断には有力な手法となります。海中作業への応用への意欲はさほど高くありませんが、原子力施設関連への応用は積極的に行われています。右図は水中レーザ切断の概念図です。切断ノズルに水が逆流しないように注意すれば切断は可能である上、通常のレーザ切断ノズルの周囲にジェット水噴出ノズルを付加して、流量が15cc/分程度のジェット水を噴出させる事により、通常の大気中での切断より切断能力が向上する事が明らかになっています4)。
 高エネルギー密度ビームを作り出すための装置が高価であり、又大型であることや、ビームを水中に照射する方法などに解決すべき問題があります。原子炉容器内構造物の切断を目的として、COレーザ及びCO2レーザやYAGレーザの適用が検討されてきました。切断を安定に行うためには、レーザ光通過経路からの水の排除が必要であり、水カーテン式のノズルを付加して水を排除する手法が検討されました。電子ビームに関しては、溶接と異なり切断の場合には裏面までビームが貫通しなければならず、シールド(真空排気)が困難となるために、水中切断への適用が試みられたことはありません。
 COレーザを用いた水中切断では、ステンレス鋼では板厚51mmまでの切断が可能であり、また板厚4mm内径270mm程度の鋼管の切断も可能であることがわかっています。水カーテンノズルを付加して、流量が15cc/分程度のジェット水を噴出させることにより、通常の大気中での切断より切断能力が向上する場合があることも報告されています71)。
 CO2レーザを用いた、原子力発電プラント用燃料チャンネル材であるジルカロイ-4の水中切断では、水密切断ヘッドを用いて、水深2mで板厚2.5mmの平板に対する切断条件の詳細な検討が行われました。パルス発振は連続発振より大幅に能力が低下することやアシストガス量が多くなるほど、適正切断条件が広くなることが明かとなっています72)。
 レーザ出力の低いYAGを用いた水中切断では、レーザは光ファイバー内を伝送させて用いることが可能であり、実用性が高くなります。3mm以下の板厚のジルコニウムの切断試験では、圧力0.3MPa流量10 l/minの純酸素を用いて、毎分1mの速度で切断が可能なことが示されています73)。

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