12.放電加工


12.1 放電加工の原理

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 放電加工(EDM:Electrical Discharge Machine)技術は、アーク切断と同様に放電エネルギーを利用した切断法です。放電加工の原理図放電加工の特徴は、作動液の中で工作物と電極を極めて狭い間隔で対向させ、電流の流れ方を制御した短時間の高パルス放電を発生させ、工作物を短時間のサイクル(一秒間に1000〜10万回)で加熱・溶融・蒸発させて除去していく点にあります。放電加工は、一連の短時間放電の除去サイクル(絶縁→放電→加熱→溶融→蒸発→除去→冷却→凝固)を繰り返します。微小領域の短時間加工サイクルを繰り返すことにより、加工速度は極端に遅いものの本質的に自動化に適した加工法であるため、レーザ切断やアブレーシブジェット切断と同様な精密加工ができます。電極の消耗を極端に低下させる技術が開発され、金型加工を始めとして多くの産業で広く使われています。型彫り放電加工の原理図
 放電加工方式は、型彫り放電加工とワイヤカット放電加工の二種類に大別できます。型彫り放電加工方式では、精密な金型が作成できるため、同じ物を大量生産する産業に貢献しています。作成したい形状に成型したグラファイト電極を用い、0.1μsecから1msecというきわめて短い時間にアーク放電を発生させ、微小な領域を溶融除去します。放電が生じた微小領域は、部分的に溶融或いは蒸発して微細なへこみ(クレータ)ができます。この過程を延々と繰り返すことにより電極の型にと同じ形状の穴が作成されます。この場合、電極が消耗してしまうと、所定の形状は得られなくなります。このため、加工液、電極素材、放電条件の最適組合せで、電極の消耗を極めて少なくしています。ワイヤカット放電加工の原理図
 ワイヤカット放電加工では、黄銅、銅、タングステン、モリブデンなどの細いワイヤを電極として用い、ワイヤに電気を流すことにより、発泡スチロールを糸鋸で切る感じで、金属を切断加工します。電極ワイヤは、切断中に焼損しないように制御されて受手側のボビンに巻き取られます。精密な自動制御装置を用いて、3次元輪郭形状を、糸鋸式に輪郭を繰り抜いて加工します。使われるワイヤ径は、通常0.05から0.25mmと非常に細いワイヤを使用しているために、切断溝幅も極めて狭く微細加工に有利です。
 ワイヤ電極を連続的に一定速度で供給し、放電による電極の消耗を無視できる程度に低減していることと、高精度加工を不燃性の純水中で行い無人運転時の火災を心配する必要がないことが特徴です。このため、現在ではワイヤカット放電加工が多くなっています。切断屑が非常に少なくガスの発生も少ないという利点から、切断速度は非常に遅いものの、原子力施設の有力な解体技術として期待できます。

金型製造に最適な放電加工
 放電加工技術は、電源、電極、工作物、加工液の四つの要素で構成されます。放電加工機には、コンデンサ充放電回路とトランジスタ放電回路の2種類が有ります。コンデンサ充放電回路の加工機は、放電加工機の先駆けとなった機械で貫通加工が出来ます。しかし、精密な電流制御が難しく、切断面は荒く無消耗加工も困難です。このため現在では、スロープコントロール方式のトランジスタ放電回路を利用した放電加工機が良く使用されています。この方式は、電流パルスの立ち上がりにスロープをつけて電極消耗を0.1%未満の消耗率に押さえられます。精密な切断溝幅を保障できます。
 液体中の通電を利用する加工法には、電気分解、電気メッキ、放電加工の3種類があります。電気分解は液体中の物質が元素に分解され電荷を帯びたイオンとなります。イオンが一方の極に付着するのがメッキです。放電加工は、スパークプラグのような断続的な放電を利用するため、分解やメッキとは異なり、火花や音が発生します。局所的な放電により電極表面の一部を溶融させ、溶融した加工部材は周囲の液体で急速冷却されて、母体の金属には再溶着されずに剥離し除去されます。放電加工では、このサイクルを繰り返して加工が進行します。
 伝導体による発熱量は抵抗値と電流値の積に比例します。気中放電の代表は内燃機関で、ガソリンなどの混合気中で放電させ、その熱で気化したガソリンを爆発燃焼させるのが車のエンジンです。エンジンのスパークプラグは、放電による電極面の損傷が少ない材料を選らんでいます。電気溶接は、内燃機関のプラグのように断続放電でなく連続して放電し高温を生み出して、その熱で金属表面を溶かして、溶着または切断をします。
放電加工の条件、特徴を以下に示します。
1) 加工する工作物には電気伝導性が必要となります。
2) 機械的な接触は無いので、加工物の硬さに関係なく加工できます。
3) 加工表面に熱変質層ができます。
4) 溶融点の高い物質の加工速度は遅くなります。
5) 加工表面を平滑にし電極消耗を押さえるために、電流制御が重要です。
6) 断続的な電流使用になるので、電波障害対策が必要です。

次ページ(12.2 低電極消耗の原理)   2013.11.25作成 2016.4.25改定

水中技術 目次
水中切断 項目
スズメッキ出現
・B.C.1500年 スズはすでにメソポタミヤ北部のアッシリアで、金属として作成され、利用されていました。スズは火によって溶けやすいことから、鉄面にぬって白く美しくし、 サビが防止に使われていました。 F・フェルフェルとA.ズュツセンゲート両氏の「化学技術史」に、 鉄面にスズをうすくかぶせて防錆する技術は、B.C.1500年頃に行われていたと書かれています。
・メッキの起源は、紀元前1500年ごろ、メソポタミア北部で鉄器に溶融すずメッキが、その後、水銀に金等を溶かし「水銀アマルガム法」として、古代エジプト、アラビア、ヨーロッパ、東洋へ、装飾品・仏像等に施したメッキ品が見つかっています。日本へはシルクロードを渡り、中国、朝鮮から伝わりました。
・日本では、西暦752年に東大寺の大仏がこの「水銀アマルガム法」で金メッキがされたと伝えられています。
放電加工はアーク
・蛍光灯は減圧雰囲気でのグロー放電です。
・オーロラの主原因は太陽活動で、太陽フレアの発生、突発的にコロナ質量放出されたコロナの地球磁気圏への衝突、高速の太陽風が噴出するコロナホールの生成と考えられています。
・放電加工はアーク放電で、ワイヤ加工は青白く光り、型彫り加工は赤っぽく光ります。