5.電極断面形状の比較(Normal)アルゴンシールド
2%トリア入りタングステン電極3.2mm、アーク電流200A,アルゴンシールド毎分10リットルの一定条件で、アーク時間を、(1)5秒、(2)10秒、(3)20秒、(4)30秒、(5)1分、(6)5分、(7)10分、(8)15分、(9)30分、(1)60分と変化させて電極表面の腐食状況と内部断面の粒界構造の変化を系統的に調べた結果です。
高速度ビデオと通常のビデオ撮影を行っており、アーク状況の変化とリムの生成状況を測定しました。アーク映像との対比を記載する予定です。
2%ThW(Normal)3.2mm Polished after 200A, Ar10 arcing for 5sec | ||||
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2%ThW(Normal)3.2mm Polished after 200A, Ar10 arcing for 10sec | ||||
2%ThW(Normal)3.2mm Polished after 200A, Ar10 arcing for 20sec | ||||
2%ThW(Normal)3.2mm Polished after 200A, Ar10 arcing for 30sec | ||||
左倍率X2500 | ||||
2%ThW(Normal)3.2mm Polished after 200A, Ar20 arcing for 1min | ||||
2%ThW(Normal)3.2mm Polished after 200A, Ar10 arcing for 5min | ||||
2%ThW(Normal)3.2mm Polished after 200A, Ar10 arcing for 10min | ||||
2%ThW(Normal)3.2mm Polished after 200A, Ar10 arcing for 15min | ||||
2%ThW(Normal2)3.2mm Polished after 200A, Ar10 arcing for 30min. | ||||
アルゴンシールドで普通に60分間200Aのアークを流すと電極先端領域には下画像に示すようにリムが生成します。電極先端部の少し黒っぽく見える領域は陰極点(電子を放出している領域)で、詳細に見ると上の断面写真のように樹枝状にタングステンが蒸発しています。リムが生成している領域の外側のプラズマ領域では、蒸発した酸化タングステンが解離する温度範囲ではあるものの、解離する量が多すぎて、タングステン蒸気分圧が飽和しているため、プラズマ中で衝突するタングステン原子は集合し一部はヒュームに、多くの成分はタングステン電極に衝突してそこでデンドライト結晶として凝固します。
図左半分の白っぽい領域は酸化タングステンが先端方向に移動しながら蒸発をしている領域です。この領域を倍率を上げて観察していくと、下図2列目に示すように電極内部から析出したトリアがより温度の高い先端領域へと移動していく様子が観察できます。移動の途中でタングステン表面に接している部分はタングステンと酸化還元反応を起こし、酸化されたタングステンはプラズマ中に蒸発をしていきます。下図3列目の断面写真は倍率が小さいため明瞭には観察できませんが、内部のトリア粉末が存在している領域が空孔になっています。
白っぽい領域とリム生成領域の中間の黒っぽい領域は完全に表面の酸化タングステンが蒸発しつくした領域です。
2%ThW(Normal2)3.2mm Polished after 200A, Ar10 arcing for 60min. | ||||
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x25 | x30 | x50 | x800(先端) | |
x100 | x500 | x1000 | x2000 | x2000 |
x800 | x800 | x1000 | x1000 | |
2%ThW(Normal2)3.2mm Polished after 200A, Ar10 arcing for many times | ||||
長時間一定した条件で使用し続けた電極よりも、短時間に何度もアーク発生を断続的の行う電極の方が消耗ははなはだしくなります。原因の一つはアーク発生時のシールド不良と考えています。表面は普通に見えますが、先端領域内部には比較的大きな気泡が発生しています。この高温度領域でトリアの酸素が接しているタングステンと反応して酸化タングステンとなり蒸発すると共に、還元されたトリウムがトリウム濃度の低い電子放出を盛んに行っている表面へと拡散したと考えています。一旦蒸発した酸化トリウムは接している壁面で頻繁に衝突を繰り返し、新たなトリア領域の酸化還元反応を繰り返して気泡が成長していると考えています。
次ページ 2017.05.19作成 2017.05.23改訂