6.3ex. GMA movies data sheet

6.1 GMA(Gas Metal Arc)溶接の特徴を知るための動画とその利用法の紹介

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 2000年頃、初めて高速度ビデオカメラを使い始めた時期に撮影した動画の紹介です。溶接は軟鋼用の一般的なワイヤ(MG50, 1.2mmΦ)を用い、溶接条件も150A前後の小電流にし、突き出し長さは25mm、溶接速度は30cm/min一定の条件です。母材はこのワイヤにはふさわしくないSUS304を主に用いています。一部で、ワイヤの極性と母材の相違によるアーク移行状態の相違を知るために軟鋼も用いています。
 図1に実際に撮影された画像の一例を、図2に高速度ビデオカメラで撮影されている状況の模式図を示します。実際には溶接部の側面からここに示した映像を白黒カメラで撮影し、溶接線後方からカラーカメラで撮影し、次節以降では白黒映像とカラー映像とを1画面に合成した映像を紹介しています。右図の映像では960nm近辺のみを透過する干渉フィルタを用いると同時に減光もしているため、高温になって発光している部分しか撮影されていません。そのため溶融電極の先端位置と溶融池の位置を撮影された画像データから推定して抽出する処理が必要となり、輝度が低くい領域を強調して表示します。
 図1の映像は強調処理をしていないために、背景領域がはっきりは判別できませんが、実際には図2に示すような状況になっています。
 また、アーク、溶滴、溶融池の挙動と電流、電圧、溶接音の時間変化の関係をみるためには、高速度撮影された動画像データを時系列で表現する必要があります。
 ここでは、動画像データを時系列化し、二次元的に表現する手法として、次のような方法を用いています。
1)この撮影をした時点では、高速度ビデオの性能はまださほど高くなく、価格も高く、データを格納するメモリも高価格で、撮影できる画像の解像度は256x256ピクセル、撮影枚数も512枚程度でした。
2)このため、撮影できた128x128ピクセル5画像12枚を時系列処理して、時間的な変動を抽出しました。まず、水平軸及び鉛直軸で最高の輝度をピックアップし、その輝度をその時間の最高輝度として赤色で表示します。横軸が時間、縦軸が水平方向もしくは鉛直方向の最高輝度となります。
3)次に、溶接ワイヤのある直線状の線分近傍(5ピクセル程度)の輝度の最高値を、中心軸輝度として緑色で表示します。水平歩行の時刻暦画像の場合には、アークが発生している高さ領域の際高輝度をピックアップしています。
4)更に各水平軸及び鉛直軸の平均値を抽出し、その輝度を青色で表示しています。
 下の映像に、赤色系のみで表示した場合と、(2)−(4)で処理した輝度を3原色で表示した例を示しますので、上下の映像を比較して見ます。異なる特徴を異なる色で表示することにより、アークによる溶滴やアークあるいはスパッタがどのような挙動をしているのかについて理解することが可能となります。

 2台のカメラは右図のような配置となります。横方向から撮影した白黒高速度カメラのデータは各画素8ビットのデジタルデータで取得できます。後ろ方向のカラーカメラは、フォトロンから当時の最新高性能機種を春休み期間に拝借して、撮影しました。このため、撮影時間は長時間可能ですが、白黒画像と同期して表示できるよう画素サイズと表示時刻間隔を調整しています。左右画像の大きさも出来るだけそろえるよう努力していますが、なかなか完全に一致させるには至っていません。
 現在の高速度ビデオ2台を用いて撮影すれば、もっと高解像度で、溶接状態に即した撮影速度で映像を取得できます。右の画像をクリックすると2画面表示の動画が再生され、下線付きのこの文章クリックすると右画像左画面の動画が4分30秒ほど再生されます。
 これらのデータは私自身の高速度ビデオ撮影初期の思いいれのある映像です。解像度や撮影速度及びデータ個数など当時の限られた条件で最も効果的に溶接条件の微妙な相違がアーク移行状態に及ぼす影響を分かりやすく理解するにはどうしたらよいのか知恵を絞って撮影して、撮影結果を理解しやすい形式にデータ処理した結果です。
 溶接現象は複雑系なので、高速度ビデオに深入りする気はあまりなかったのですが、何故複雑なのか、理解するうえでのヒントは無いかと考えて、やはり高速度ビデオできちんと観察するしかないと考えました。
 現時点で振り返ると撮影条件選定の不備や撮影技術の未熟さなど、多くの反省点が目に付きます。高速度ビデオを溶接現象の解析に使用することに踏み込んだ最初の頃のデータなので、あえて掲示することにしました。上に示した赤色系の時刻暦表示は、右図右側の映像最高輝度のみを表示した時刻暦表示です。白黒の熱画像を如何に理解しやすく表示するのかについても、まじめに考え始める契機となったビデオです。

次ページ   2016.7.1作成, 2016.8.20改定

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動画の説明
・今は昔、2000年3月に撮影した映像です。現在は高精細で鮮明な高速度ビデオ映像はふんだんにあります。古くてもそれなりに見所はあると思い、掲載することにしました。
・当時は、実際の撮影に制約が多い「水中溶接・切断の現象」を解明したいとの思いが強く、照明を用いないうまい撮影法がないかと思案していました。
・溶融金属からの光をある程度有する近赤外領域なら、アークの光も少しは弱まるので同かなと考えて、狭帯域の干渉フィルタを用いることにしました。
・通常のビデオカメラ撮像素子直前についている近赤外カットフィルタをはずしてGTA溶接現象を撮影すると、ある程度明瞭な溶接現象が観察できました。
・それで、白黒ビデオカメラの近赤外カットフィルタをはずして、狭帯域の干渉フィルタを用いると、溶接現象をうまく撮影できました。
・高速度ビデオは科学技術撮影用なので、近赤外カットフィルタがついていない機種が多く、溶接現象観察にはぴったりでした。