3.3 接地
1)アース(接地)
「アース」とは、地中深く埋め込んだ銅板(銅棒)などと電気器具とを電線で接続した、電気を逃がす通路のことです。電気器具にアースを取り付けておけば、万一漏電した場合にも、電気はこの通路を通って流れ、人体に電気が流れる危険性を小さくすることができます。なお、アースといっしょに漏電遮断器を取り付けておくと、電流が本来の電気回路以外に漏れているのを感知して自動的に電気を消してくれます。このため、故障が発生しても事故にあう危険性は低くなります。電線にとまった鳥のように、電圧がかかっているところに触っても電流が人体を流れない状態になっていれば、致命的な事故は発生しにくいのですが、器具にアースがついていない場合には、器具と人体双方の対地電圧が不定になることから、双方の静電容量に応じた電流が瞬間的な流れる静電気災害が発生する危険性が高くなります。
アース線をガス管に接続した場合、途中で火花が発生してガス爆発あるいは火災を起こす危険性があります。昔は水道管は金属の管が多く使われていましたが、最近は電気を通さない合成樹脂製が多くなっています。このため、アース効果は期待できません。また、不用意にアースを複数のところで確保した場合、アース線内部で閉回路ができて思わぬところに電圧がかかる場合があます。アース(接地)線を取り付ける場合には、全体の回路を正確に理解しておく必要があります。
2)避雷針
通常人間は大地と等電位(同じ電圧)になっています。露出した電線などに触らない限り感電することはありません。しかし、まれに雷に打たれて感電事故に遭う人もいます。避雷針は周囲の建物より高い位置に接地した金属棒で、雷を避雷針に誘導することで建物の屋根より高い位置を大地と等電位に保ち、人体を感電から守っています。雨の中でも試合を続行するサッカーの場合、過去にはゴールポスト周辺に位置していて雷撃事故にあった選手も結構な多くいました。現在は、雷のなる音が聞こえたら、安全が確認できるまで試合を中断し、安全な場所に避難することになっています。雷のように瞬間的に高電圧がかかる場合には、予想していない経路を電流が流れることがあります。全体の幾何学的形状を勘案して避雷針の設計をするとともに、コンセントも耐雷撃性能を有するものを選定することが重要です。
3)システム接地
高電圧機器でも、大地電位の部分(電線)に触っても感電はしません。保安の目的で、配電線は1線を接地(アース)する習慣になっており、これをシステム接地と言います。2本の電線の両方とも大地から絶縁されている場合には、何かのきっかけで高い電圧がかかった時に機器が帯電して高電圧になる危険性があります。しかし、確実なシステム接地により、その危険性は大幅に小さくなります。
4)フレーム接地
電気機器の外周(フレーム、或いは、ケース)を接地をすれば、漏電していたとしても、フレームには電圧がかからず、感電事故を防止できます。これをフレーム接地と言います。身近な家電製品でも、高電圧電源を内蔵している電子レンジとか、水を使う電気洗濯機などは、安全のため、フレーム接地端子に接続(接地)して使う必要があります。分電盤の接地端子は接地抵抗が高い場合がありますが、フレーム接地の目的には有効です。
5)漏電遮断器
システム接地とフレーム設置が確実にできていれば、電気器具が漏電したときには、本来の電路以外にフレーム接地した線路にも電流が流れます。この電流漏れを検知して、人体に悪影響を及ぼしにくい0.1秒以下の短時間で自動的に電気を切る装置が漏電遮断器です。電源盤から作業場内の数か所に枝分かれして配線する場合には、途中に分電盤を設置して、個々の電気器具に適した漏電遮断器をつけ、分電盤から電気が供給されている電気設備・器具の漏電による事故を防ぐようにします。海中作業では、人体への安全性を考慮して、遮断時間を20ミリ秒以内としています。
次ページ 2016.04.02作成 2017.04.28改定