高速度カラー映像(SUS-MIG)

2.SUS304へのアルゴンアークの挙動

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高速度カラー映像(SUS-MIG)
アルゴンシールドによるMIG溶接では、アークが不安定になることが良くあります。アルゴン中へ酸素を若干量入れてアークを安定にさせる方法がありますが、適正量を超えると逆に電極が高速度で触れ回ることがあります。溶滴の移行現象やアークの不安定現象を観察するためには、高速度ビデオを用いる必要があります。このページでは毎秒400駒の映像を中心に溶滴の移行や電極の振れ回りなどの現象を示します。極点は表面の状態に大きく影響され、SUS304の表面に酸化物系のフラックスを塗布してアークを溶融池表面に集中させることもできます。

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活性フラックスを塗布したSUSのMIG溶接の高速度カラー観察。絞りを大きく明けてアークを観察すると、アーク部は飽和し溶滴の移行は観察できないが、周辺の状態は明瞭に観察できる。活性フラックスを塗布した場合、極点は溶融池表面に安定して発生し、アーク集中と安定に効果がある。
(sus-f1.avi, 240×240, 10秒)
15)
活性フラックスを塗布したSUSのMIG溶接の高速度カラー観察(絞りを明けてアークを観察)、フラックス塗布によるアークの集中の効果を観察。アーク長の変動はあまり無く、母材表面でのアークの変動も少ない。ビードと母材の状態が明瞭に観察でき、溶融池表面での振動も観察できる。
(sus-f10.avi, 240×240, 30秒)
16)
活性フラックスを塗布したSUSのMIG溶接の高速度カラー観察(絞りを絞って溶滴移行を観察)。絞りを強くする、あるいはシャッター速度を上げて画像素子に入る光量を小さくすると、ビードや母材表面は見えなくなるが、アークの内部の状況が理解しやすくなる。電極ワイヤ直径と同程度の大きさの溶滴が次々に母材に移行する現象が確認できる。移行を詳細に観察するにはもっと高速度で撮影する必要がある。活性フラックス塗布により極点が溶融池表面に安定しアークが集中している。
(sus-f2.avi, 240×240, 10秒)
17)
活性フラックスを塗布したSUSのMIG溶接の高速度カラー観察(絞りを絞って溶滴移行を観察)。溶滴の移行は周期的ではなく次々に小さい溶滴が移行する期間とワイヤ先端の溶滴が大きく成長しアーク長が伸びる期間が交互に発生する。アーク長が伸びたとき母材表面の極点位置が変動することがある。
(sus-f20.avi, 240×240, 30秒)
18)
活性フラックスを塗布していないSUSのMIG溶接の高速度カラー観察(絞りを明けてアークを観察)。母材表面に何の処理もしない場合には陰極点が固体部分を動き回り、結果的にアーク長が不規則に変動する。活性フラックスを塗布した場合にはアークが溶融池表面に集中しビード幅は狭くなるが、塗布しない場合には極点は溶融池周囲を走り回ることが多くビード幅は広くなる。
(sus-n1.avi, 240×240, 10秒)
19)
SUSのMIG溶接の高速度カラー観察(絞りを明けてアークを観察)、アルゴンアークは変動し、溶融池も横に広がる。溶融池表面に粒状のスラグが発生し、溶融池表面を不規則に移動する。
(sus-n10.avi, 240×240, 30秒)
20)
SUSのMIG溶接の高速度カラー観察(絞りを絞って溶滴移行を観察)。溶滴の移行は活性フラックスを塗布した場合と大きな相違は認められないが、アーク長の変動は大きい。溶融池と固体部との境界で極点が発生することが多く見られる。
(sus-n2.avi, 240×240, 10秒)
21)
SUSのMIG溶接の高速度カラー観察(絞りを絞って溶滴移行を観察)。最初は活性フラックスを塗布した部分の映像であり、アークは中心に安定に発生しビード幅も狭い。活性フラックスがなくなると、極点は不規則に変動を始め、アーク長も大きく変化する。溶滴の移行にはあまり大きな変化は認められないが、ビード幅は広くなる。
(sus-n20.avi, 240×240, 30秒)
22)
SUSのMIG溶接の高速度カラー観察、電極の触れ回り現象。電流が大きすぎると電極先端部は先細り形状になるとともに、電極温度は軟化点以上になり、アーク電流による電磁気力で 横方向に撓んで不規則な回転運動が発生する。溶融池紹介での極点固着や溶融池表面の微細な振動が観察される。
(susrotate.avi, 320×240, 30秒)
23)
GMA溶接現象の高速度ステレオ観察、左はカラーを後方から、右は熱画像(955nm)を側面から撮影して擬似カラー表示。右の画像は単色画像であり、校正をきちんとすれば、画像の明度から温度が推定できる。電極が赤くなり周囲と電極とが識別できるようになると、電極過熱により軟化した先端部分が、電磁気力により駆動され触れ回る現象が理解できる。
(gma27c1.avi, 344×220, 34秒)
25)
GMA溶接現象の高速度ステレオ観察、左はカラーを後方から、右は熱画像(955nm)を側面から撮影して擬似カラー表示。左のカラー画像ではアークの変動の様子が観察でき、右の熱画像では溶滴のサイズやグロビュール移行、特に短絡時の移行挙動が明瞭に理解できる。また、スパッター近傍の蒸気などが識別可能。
(gma12c1.avi, 344×220, 34秒)
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次ページ 2017.05.13作成 2017.05.13改訂