溶融池の挙動

5.溶融池の挙動

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アーク溶接中の溶融金属の挙動については未解明な点が多くある。これは、狭い領域で高速度で変動していること、アークが邪魔になり撮影が難しいことなどが原因となっている。このページでは、活性フラックスの有無により、GTA溶接中の溶融池表面挙動がどのようになるのかについて紹介します。

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GTA溶接(Heシールド)のアーク発生直後のジルコニア粒子挙動の高速度観察(高硫黄=220ppm)。硫黄濃度の高いSUS304のヘリウムアーク溶接ではアークは中央に集中し、内向きの流れが強く溶け込みも深くなる傾向を持つ。SUS304の表面に0.1mmのジルコニア粒子を置きアークを発生させ挙動を観察すると、ジルコニア粒子が中央に集中し、金属蒸気も中央部に集中する傾向を示す。
(hehs150-khi, 256×256, 20秒)
45)
GTA溶接(Heシールド)のアーク発生直後のジルコニア粒子挙動の高速度観察(低硫黄=10ppm)。硫黄濃度が低い場合には、ジルコニア粒子は中央部には異動できず溶融池周辺にとどまる。金属蒸気も幅広く発生しており、アークが分散し溶融金属は外向きに流れる傾向が認められる。この場合には幅広く溶け込みの浅いビードとなりやすい。
(hels150-khi, 256×256, 30秒)
46)
フラックス塗布時の溶融金属上でのジルコニア粒子の高速度ステレオ映像。Ar10+He10L/minでシールド。熱画像(左)を後方から、カラー画像(右)を側面から同期して撮影。ジルコニアにアークが集中し、明るく輝き溶けてしまうことがある。ジルコニウム粒子は溶融池の中のほうを通って後方へ移動。
(180_arhe-f, 512×256, 12秒)
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フラックスがない場合の溶融金属上でのジルコニア粒子の高速度ステレオ映像。Ar10+He10L/minでシールド。熱画像(左)を後方から、カラー画像(右)を側面から同期して撮影。ジルコニアはあまり明るくならず、極点の集中は少ない。ジルコニウム粒子は中心部には入り込まず、周囲を不規則に運動しながら後方に流れる。
(180_arhe-n, 512×256, 28秒)
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軟鋼のGTA(He)、映像の前半はフラックスが無い場合であり、途中からフラックスを塗布領域に突入。陽極中心は電極直下よりやや後方に存在し、フラックスなしの場合には金属蒸気が発生しており、フラックスありの領域では金属蒸気の発生が抑制される。フラックスを塗布している場合には陽極領域は集中し溶融池表面の振動が顕著になる。電極近傍の高温度領域では金属からの発光はない。
(0106gta-f, 240×180, 18秒)
49)
軟鋼のGTA(He)、水冷同板上でアークを発生させ、母材を移動させて、軟鋼フラックスなし、軟鋼フラックス塗布へと溶接が進行。水冷同板上では金属蒸気の発生(発光)はなく、軟鋼にアークがあたると金属蒸気が発光。フラックスを途中から塗布、金属蒸気の発生が抑制される。下部の状態が変化すると電極の状態も変化する。
(0109gtahe-f2, 320×240, 09秒)
50)
高硫黄(220ppm)SSUS304、Ar、GTA(3%トリウム入りタングステン電極)のアーク始動時の挙動の高速度カラー観察(1000駒/秒)。起動時に陰極全体が青白く光るが、このときには陰極点が電極側面上を高速度で移動している。電極温度が上昇すると、陰極領域は先端部に固着する。高周波を停止するとアークの状態が変化する。陽極は電極直下に形成され、溶融しても中央部に集中している。
(150ah13, 256×200, 19秒)
51)
高硫黄(220ppm)SUS304への静止アークの高速度観察(200駒/秒)(電極高さの影響)。電極位置が高くなると周囲の空気(酸素)を巻き込んで、溶融金属が沸騰し、スパッタが飛び出る。電極位置が低いと安定(酸素の混入が少ない)、アークは集中する。電極高さが高い場合には、溶融池境界部で酸化している層が明るく観測される。
(ar_ht_hs, 480×160, 34秒)
52)
低硫黄(10ppm)SUS304への静止アークの高速度観察(200駒/秒)(電極高さの影響)。電極位置が高くなると周囲の空気を巻き込んで、溶融金属が沸騰し、スパッタが飛び出る。電極位置が低いと安定。高硫黄と比較してアークはあまり集中しない。電極高さが高い場合には、溶融池境界部で酸化している層が明るく観測される。
(ar_ht_ls, 480×160, 34秒)
53)
SUS304への静止アーク(電極高さの影響)をレーザパルス照明で高速度観察(1000駒/秒)。左が低硫黄SUS304への静止アーク、右が高硫黄SUS304への静止アーク。上から下に電極高さが高くなり、電極が母材から離れると溶融池幅は広がり酸化されやすくなる。レーザ照明でアルゴンアークを消して、溶融池上のスラグの挙動を明瞭に観察。いづれの場合も溶融池周辺から中央へ向かう流れが観察される。中央近傍のある領域でスラグは停滞する傾向を示す。中央部の溶融池温度は高くスラグは溶解する可能性大。
(ar_ht_lsr, 400×300, 34秒)
54)
SUS304への静止アーク(電極先端角度の影響:左から30度、45度、60度)を高速度観察(1000駒/秒)。シールドが若干悪くアークは不安定。溶融池表面挙動、アークの挙動については、角度の違いによる大きな相違は認められない。
(ar100-angl, 520×160, 34秒)
55)
SUS304への静止アーク(左上:Ar低硫黄(10pm)、左中:Ar高硫黄(220pm)、左下:He(低硫黄フラックス塗布、右上:He低硫黄、右下:He高硫黄)を高速度観察(200駒/秒)。硫黄含有量による溶融池の形状の変化を観察。硫黄濃度が高い場合にアーク集中、フラックス塗布した場合も同様で極点は高速度で移動。静止アークであり、フラックスの蒸発などで効果が小さくなるとフラックスが無い場合と同様にアノードの集中が無くなり金属蒸気が広い領域で発生する。
(flux-s, 560×300, 30秒)
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プラズマのキーホール溶接の高速度観察(1000駒/秒)、左は側面情報から撮影、右は切断進行方向から裏面を撮影。ワイヤ高さが高くなると、シールドが悪化し、溶融池のスラグが増加、溶滴は溶融池に入らず、落下。溶融金属の流れも変化。最上段のワイヤがない場合には、側面から後方への流れが顕著。キーホール直後の左右のスラグはこの流れにより渦のように観察される。2段目のワイヤを投入した場合には、キーホールの形成が間欠的になり、側面流れが弱くなる。ワイヤが母材から離れるとシールドが悪化しスラグが増加する。停滞したスラグの下を溶融金属が高速度で後方へ移動する。
(cmpfwnsc, 400×512, 16秒)
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次ページ 2017.05.13作成 2017.05.13改訂