4.11 ガス切断(Gas cutting)開始時挙動の動画一覧
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ガス切断では、鉄鋼の溶融温度より低い温度で酸化(燃焼)反応が生じ、その生成熱が高いことを利用して持続的な安定切断を実施する。一旦酸化反応が開始すると酸化鉄部は溶融し切断ガス気流で下方に押し流され安定な切断ができる。鋼材を予熱し高温になった部分に酸素を吹きかけると酸化反応が起きて切断が始まる。酸化反応が最初に生じる過程を高速度カメラで観察すると、鉄の燃焼・溶融がどのように生起しているのかについての理解が深まる。過渡期の挙動の観察は、定常状態の観察では見過ごしがちな現象に眼を向けることができ、重宝している。
1.ガス切断現象の超高速度観察 (32000駒/秒) |
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(1)開始20kfps |
(2)開始200fps |
(3)切断開始時 |
(4)固体壁露出 |
(5)定常状態 |
(6)定常状態 |
(7)薄板切断現象 |
(8)薄板切断現象 |
ガス切断は鋼材と酸素との化学反応を利用している。反応条件が整わないと所定の切断結果が得られない。所定の温度に到達した時点で切断酸素を吹き付けると、表面端部で急激な酸化燃焼反応が生じる。酸化生成熱は自身をその温度まで上昇させる以上の熱量なので、持続的な酸化反応が連続する。しかし、鋼材基面に溶融(スラグ)層が存在しないと、持続的な酸化反応は起こらない。切断開始時の状態を高速度カメラで捉えてゆっくりと再生して現象を見ることで、ガス切断の理解を深めることができる。
溶融酸化鉄(スラグ)の表面で切断酸素は鉄と結合し溶融部の内部に取り込まれ、固体部へ拡散しながら酸化反応が連続的に生じる。切断初期にはスラグの流れは不安定(上段の動画3)で、未燃焼の固体壁部分が局部的に残されることがある(上段の動画4)。切断の進行とともに溶融酸化鉄で覆われて完全な切断反応が進行する(上段の動画5)。また酸化(燃焼)反応は一様ではない。動画6は955nm近傍の波長のみを透過させる干渉フィルターを用いて撮影した単色熱画像であり、明るい部分ほど温度が高い状態を示す。上の端に見える青白い部分は予熱ガス炎。
肉厚50mmの鋼材の切断反応を撮影。縦方向を1/4に縮尺して表示。ガス切断では角が熱せられやすい端部から切断を開始する。切断開始直後では切断材の温度は低く、上端で酸化溶融した流体は高速度の切断ガスで不規則に吹き流される。ある程度切断溝が切断進行方向に食い込んだ時点で安定な切断溝が形成される。シャッター速度を1/1万秒にして撮影しているため、不均一な切断反応は理解できるが、撮影速度が不足しておりその時間的な挙動は分からない。現象の正確な理解のためには、毎秒1万駒以上の高速度撮影が必要となる。撮影にはNACのHSV400(ビデオテープに録画するタイプ)を用い、撮影後に再生してそのビデオ信号をPCのビデオキャプチャでデジタルデータとして記録している。ガス切断は非常に縦に細長い映像のため、カメラを90度寝かせて、640x480画素の長い横方向のデータを取得し、再構成している。
画像もしくは下段のキャプションをクリックすると、別タブで映像が再生されます。
次頁(4.12 水中ガス切断動画) 2014.11.12作成 2017.11改定