8.3 水カーテン式水中溶接とは
水カーテン式局所乾式法は、ノズル周囲に高速の水を流して、水の流れを利用した隔壁を構成する方法です。流体を隔壁として利用しますから、ノズルと母材の間隔が変動しても隔壁は維持されます。しかし、安定なシールド状態を確保するためには、固体壁を用いる場合に比べて大量のシールドガスが要求されます。この方式は、連続的な溶接で、かつ、溶接側の形状が連続的に変形している場合などに用いられます。
カーテン水が無い場合には、シールドガスは大きな塊となって間欠的にノズルから放出されます。ノズルから気泡が分離する瞬間に、周囲の水が内部に侵入してきます。このため、アークが不安定になったり、あるいはアーク内部に水素が入り込み溶接結果に悪影響を及ぼす危険性が高くなります。一方、水カーテンを流している場合には、シ−ルドガスは小さな気泡に細粒化されて放出されます。この場合には内部の圧力変動は小さく、外部からの水の浸入の危険性は小さくなり、安定なシールド状態を保つことが容易になります。
溶接結果に影響を与える因子として以下のような因子があります。
(1)開先角度,板厚
(2)開先ギャップ
(3)目違い高さ
(4)ウィービング幅
(5)トーチ高さ
(6)ノズル形状
(7)溶接姿勢
(8)潮流,波浪,水圧
メガフロートの湿式水中溶接法実用化を目的として、メガフロート技術研究組合と共同で、水カーテン式局所乾式溶接法の改良を実施し、以上の因子について詳細な研究をしました。通常の自動溶接ノズルの先端に設置できる小型の水中溶接ノズルを開発して、その性能を実証しました。具体的には、(1)局部空洞を安定に形成する方法を考案するとともに、(2)効果的な裏当て材を開発して、(3)適正溶接条件を求めました。また、(4)溶接部の強度特性を改善するための溶接材料の組合せなどと、(5)自動化技術の開発を行いました。
実際の構造物の溶接では、溶接を確実に行うために、溶接する部分にV開先と呼ばれるV型の空間を作って、そこに溶接ワイヤを溶かし込んで接合することが行われます。水カーテン法式による局部空洞の形成では、平面の場合とV開先がある場合には、空洞形成条件が異なります。また、実際の現場での施工では、V開先の底部の間隔(ルートギャップと呼びます)が一定でなかったり、鋼材の高さが異なったりすることも考えられます。このため、考えられるいろいろな条件で局部空洞を安定に形成するノズル形状とシールド条件を調査しました。
次ページ 2016.03.15作成 2016.04.18改定