5.10 裏面での酸化反応(作成中)
通常の手溶接では溶融池表面の状態を見ながら、裏まで確実に溶け込んでいるかどうかを判断しながら溶接を実施します。裏面まで確実に溶かし込む溶接では裏当を設置するか、裏側にもシールドガスを流して、裏面の溶融金属が酸化することを防ぎます。裏当がなくシールドも無い場合には、裏面まで溶け込んだ時点で溶融金属を支える領域が無くなるため、裏面側溶融金属全体を表面張力により支えます。溶加棒を用いない場合には、裏まで溶け込むと表面側の溶接池表面が沈み込むため、裏まで貫通していることを判別できます。
また、裏面側がシールドされていないと、裏面の溶融金属に空気細分の一部である酸素が入り込み、その結果反応生成したスラグが表面に浮かび出てくるために、貫通していることが知覚出来ます。右の画像はアルゴンシールドで溶接を行っているときの溶融池表面の動画です。シールドガスがアルゴンの場合にはプラズマからの発光が強く、溶融池を観察しにくいため、レーザ照明を用いています。溶融池の液位とスラグとにより片溶込みか貫通溶込みかを判別できる動画の例です。
裏面までの確実な貫通溶接が求められるケースは沢山あります。構造の関係で、溶接後に裏面の溶込みを確認できない場合も多く、溶接中に表面の状況のみを見て確実に貫通溶接を実施できる熟練溶接技能者の養成を目的として、溶接技量訓練装置を開発しました。二つの方向から見た溶融池の状況と、裏面の状況及び溶接士の全景の4つの画面を同時に撮影し、同時に電圧と電流を計測しています。装置は溶接中の裏面の状況を判別し、メロディーで溶接士に状況を教示するようになっています。また、溶接終了後に電圧電流も含めて実際の状況を何度でも再現できるようにしています。右の画像は熟練溶接士の溶接作業の例です。実際のトーチ高さと狙い位置、裏面の溶融状況と溶融池が溶接線からどの程度ずれているのか、あるいは溶接速度がどの程度変動しているのかなどの解析を、アーク電圧及び電流を参照しながら解析できます。また、指導員が横で見守っている場合には、指導の音声も同時に録音できる構成になっています。
右の画像は初心者が溶接を実施した場合の例です。狙い位置がずれたり、トーチ高さが本来の高さよりかなり高くなっていることなどが記録され、何度でもこの映像を見直すことによりイメージトレーニングを行うことが出来ます。実際に溶接を実施している最中には、指導員から何を指摘されているのかを判断できることは少ないのが実際です。実際に溶接している状況は訓練現場を離れて事務所の机の上で観察できるため、冷静に良いところ悪いところを判断しやすくなっています。全ての改善策を考えながら映像を観察するのは難しいのですが、特定の改善策に絞って注目すべき領域に集中して、繰り返して見直すことが出来るために、何度でも同じ映像を繰り返して見直すことが出来るために、ステップバイステップで、眼から知識を吸収し改善すべき点を把握することができます。
デジタル情報で記録されているために、熟練者と初心者の溶接状況を並べて再生することも出来ます。この装置は裏面部分をシールドして使用するのを基本としていますが、裏面を空気に露出させることも出来、裏面がシールドされているときといないときとで、表面の溶融池の状況がどのように異なるのかについても学習できるようにしています。
裏波の動画は現在整理中です。
次ページ 2017.05.01作成 2017.05.03改訂